最終更新日:2023/9/7
法人の不法行為責任
ほうじんのふほうこういせきにん一般社団法人および一般財団法人に関する法律は、「法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定している。
この規定について、法人実在説の立場からは、法人が社会的実在である以上、法人自身が不法行為を行なうことは当然にあり得るので、目的の範囲内で法人は損害賠償責任を負うのが当然であると解釈されている(ただし、法人擬制説・法人否認説では代表者の不法行為について、法人に責任を負わせた特例的な規定であると解釈されている)。
法人の不法責任については、「その職務を行うについて」という部分の解釈が重要である。もし代表者の職務執行の範囲を厳格に解釈するならば、職務執行に「不法行為」が含まれることは稀であるから、判例では、理事の職務執行の範囲が広く解釈されている。たとえば判例は、「外形上、理事の職務行為と認められるもの、および社会通念上その職務行為に関連するもの」を理事の職務執行とし(これを外形理論という)、法人と取引をする相手方を保護している。
なお、法人が不法行為責任を負う場合でも、理事個人も個人として不法行為責任を負うものとされている(判例)。
-- 本文のリンク用語の解説 --
一般社団法人
法律(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)に基づく準則に従って設立された社団法人をいう。
従うべき主な準則は、
1)目的、社員資格の得喪に関する規定などを定めた定款を作成すること
2)定款中に、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定めが無いこと
3)社員総会その他の機関を一定の手続きによって設置・運営すること(社員総会及び理事は必置であり、理事会、監事、会計監査人は定款により設置を選択できる)
4)一定の方法によって会計を処理すること
である。 一般社団法人は、主たる事務所の所在地において、準則に適合するかどうかのみの審査を経て設立の登記をすることによって成立し、名称中に「一般社団法人」という文字を独占的に使用する。
従うべき主な準則は、
1)目的、社員資格の得喪に関する規定などを定めた定款を作成すること
2)定款中に、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定めが無いこと
3)社員総会その他の機関を一定の手続きによって設置・運営すること(社員総会及び理事は必置であり、理事会、監事、会計監査人は定款により設置を選択できる)
4)一定の方法によって会計を処理すること
である。 一般社団法人は、主たる事務所の所在地において、準則に適合するかどうかのみの審査を経て設立の登記をすることによって成立し、名称中に「一般社団法人」という文字を独占的に使用する。
一般財団法人
法律(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)に基づく準則に従って設立された財団法人をいう。
従うべき主な準則は、 1)目的、設立者が拠出する財産及びその価額、評議員の選任・解任の方法などを定めた定款を作成すること
2)定款中に、理事又は理事会が評議員を選任・解任する旨、及び設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定めが無いこと
3)評議員、評議員会、理事、理事会、監事を一定の手続きによって設置・運営すること(大規模一般財団法人については会計監査人が必置)
4)一定の方法によって会計を処理すること
である。 一般財団法人は、主たる事務所の所在地において、準則に適合するかどうかのみの審査を経て設立の登記をすることによって成立し、名称中に「一般財団法人」という文字を独占的に使用する。
従うべき主な準則は、 1)目的、設立者が拠出する財産及びその価額、評議員の選任・解任の方法などを定めた定款を作成すること
2)定款中に、理事又は理事会が評議員を選任・解任する旨、及び設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定めが無いこと
3)評議員、評議員会、理事、理事会、監事を一定の手続きによって設置・運営すること(大規模一般財団法人については会計監査人が必置)
4)一定の方法によって会計を処理すること
である。 一般財団法人は、主たる事務所の所在地において、準則に適合するかどうかのみの審査を経て設立の登記をすることによって成立し、名称中に「一般財団法人」という文字を独占的に使用する。
法人
私法上の概念で、自然人以外で、法律上の権利・義務の主体となることを認められた団体・財産をいう。
法人の設立は、法律の規定によらなければならないとされている。
例えば、一般社団法人、一般財団法人、株式会社、学校法人、宗教法人、管理組合法人などはすべて法人である。
法人の設立は、法律の規定によらなければならないとされている。
例えば、一般社団法人、一般財団法人、株式会社、学校法人、宗教法人、管理組合法人などはすべて法人である。
損害賠償
違法行為によって損害が生じた場合に、その損害を填補することをいう。
債務不履行や不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば損害賠償義務を負うことになる。その損害は、財産的か精神的かを問わず、積極的(実際に発生した損害)か消極的(逸失利益など)かも問わず填補の対象となる。
ただし、その範囲は、通常生ずべき損害とされ、当事者に予見可能性がない損害は対象とはならない(相当因果関係、因果の連鎖は無限に続くため、予見可能性の範囲に留めるという趣旨)。
損害賠償は原則として金銭でなされる。また、損害を受けた者に過失があるときは賠償額は減額され(過失相殺)、損害と同時に利益もあれば賠償額から控除される(損益相殺)。
なお、同じように損害の填補であっても、適法な行為(公権力の行使)によって生じた不利益に対する填補は、「損失補償」といわれて区別される。
債務不履行や不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば損害賠償義務を負うことになる。その損害は、財産的か精神的かを問わず、積極的(実際に発生した損害)か消極的(逸失利益など)かも問わず填補の対象となる。
ただし、その範囲は、通常生ずべき損害とされ、当事者に予見可能性がない損害は対象とはならない(相当因果関係、因果の連鎖は無限に続くため、予見可能性の範囲に留めるという趣旨)。
損害賠償は原則として金銭でなされる。また、損害を受けた者に過失があるときは賠償額は減額され(過失相殺)、損害と同時に利益もあれば賠償額から控除される(損益相殺)。
なお、同じように損害の填補であっても、適法な行為(公権力の行使)によって生じた不利益に対する填補は、「損失補償」といわれて区別される。
不法行為
他人の権利・利益を違法に侵害したことによって損害を与える行為をいう。
このような行為によって生じた損害については、当事者間の契約関係の有無にかかわらず、加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない(被害者は、加害者に賠償を請求する債権を得る)。
不法行為が成立するには、一般の原則として、 1.加害者の故意または過失に基づく行為であること、2.他人の権利または法律上保護される利益を侵害したこと、3.現に損害が発生し、その損害の発生と行為との間に因果関係があること、4.加害者に責任能力があること という要件を満たさなければならず、1.から3.の立証責任は、損害賠償を請求する者が負う。
しかし、要件1.の過失については、特殊なケースについて特例がある。例えば、建物などの工作物の設置・保全に瑕疵があって他人に損害を与えた場合(工作物責任)は、その占有者が賠償責任を負うが、損害が生じないよう十分に注意していたかどうか(無過失である)の立証責任は加害者が負うとされる。原則は被害者が立証しなければならないとされているため、責任が転換されるのである。さらには、占有者が無過失であるときには、賠償責任は所有者が負うことになる。しかも、所有者は無過失であっても責任を逃れることはできないとされる(無過失責任)。このように、工作物など他者に危険を与える恐れのあるものに関しては、不法行為の責任をより強く求めるのが通例である(危険責任の考え方)。
そのほか、雇用された者が他人に損害を与えたときの雇用主の責任(使用者責任)のように、利益を得る過程で与えた損害については、より強く責任を負うべきであるとされている(報償責任の考え方)。公害被害に対する賠償責任、製造物責任などは、報償責任の考え方を法定したものと捉えることもできよう。
さらには、一般の不法行為原則においても、過失の有無の判断は争いになりやすい。大まかに言えば、単に不注意であるというのではなく、損害が予測できることを前提に(予見可能性)、その予見できた損害を回避する行為義務(結果回避義務)を怠ったという客観的な行為義務違反をもって過失と認定される。
不法行為によって賠償すべき損害は、財産的損害のみならず精神的苦痛も損害と認められる(これに対する賠償が慰謝料である)。また、賠償請求権は、損害および加害者を知ったときから3年、不法行為がなされたときから20年で時効消滅する。
なお、公権力の行使または公の営造物の設置管理の瑕疵による損害の賠償については、別に法律の規定があり(国家賠償法)、公権力の行使については故意・過失および違法を責任要件としているが、公の造営物の設置管理の瑕疵(例えば、通常有すべき安全性を欠く場合)に関しては無過失責任としている。
不法行為が成立するには、一般の原則として、 1.加害者の故意または過失に基づく行為であること、2.他人の権利または法律上保護される利益を侵害したこと、3.現に損害が発生し、その損害の発生と行為との間に因果関係があること、4.加害者に責任能力があること という要件を満たさなければならず、1.から3.の立証責任は、損害賠償を請求する者が負う。
しかし、要件1.の過失については、特殊なケースについて特例がある。例えば、建物などの工作物の設置・保全に瑕疵があって他人に損害を与えた場合(工作物責任)は、その占有者が賠償責任を負うが、損害が生じないよう十分に注意していたかどうか(無過失である)の立証責任は加害者が負うとされる。原則は被害者が立証しなければならないとされているため、責任が転換されるのである。さらには、占有者が無過失であるときには、賠償責任は所有者が負うことになる。しかも、所有者は無過失であっても責任を逃れることはできないとされる(無過失責任)。このように、工作物など他者に危険を与える恐れのあるものに関しては、不法行為の責任をより強く求めるのが通例である(危険責任の考え方)。
そのほか、雇用された者が他人に損害を与えたときの雇用主の責任(使用者責任)のように、利益を得る過程で与えた損害については、より強く責任を負うべきであるとされている(報償責任の考え方)。公害被害に対する賠償責任、製造物責任などは、報償責任の考え方を法定したものと捉えることもできよう。
さらには、一般の不法行為原則においても、過失の有無の判断は争いになりやすい。大まかに言えば、単に不注意であるというのではなく、損害が予測できることを前提に(予見可能性)、その予見できた損害を回避する行為義務(結果回避義務)を怠ったという客観的な行為義務違反をもって過失と認定される。
不法行為によって賠償すべき損害は、財産的損害のみならず精神的苦痛も損害と認められる(これに対する賠償が慰謝料である)。また、賠償請求権は、損害および加害者を知ったときから3年、不法行為がなされたときから20年で時効消滅する。
なお、公権力の行使または公の営造物の設置管理の瑕疵による損害の賠償については、別に法律の規定があり(国家賠償法)、公権力の行使については故意・過失および違法を責任要件としているが、公の造営物の設置管理の瑕疵(例えば、通常有すべき安全性を欠く場合)に関しては無過失責任としている。
職務行為
法人の理事が、法人の目的の範囲内で行なう行為のこと。
法人は定款または寄付行為に定められた目的の範囲内で、権利を取得し、義務を負担することとされているので、法人の代表機関である理事はこの目的の範囲内で代表機関としての行為を行なうことができる。このような理事の行為のことを一般に「職務行為」と呼んでいる(法人の権利能力・行為能力を参照のこと)。
理事の職務行為が問題となるのは、法人が不法に他人に損害を与えた場合(=法人に不法行為責任が発生する場合)である。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条・民法第715条では「理事などの代表機関が職務を行なうにつき他人に加えたる損害は法人が賠償する責任を負う」と規定して、法人が不法行為責任を負うことを明記している(詳しくは法人の不法行為責任へ)。
しかし、仮に上記の「職務を行なうにつき」という言葉を厳格に解釈するならば、そもそも理事が不法に他人に損害を与える行為自体が「職務」の範囲から除外されるという問題が生じる。
(不法に他人に損害を与える行為は、もはや法人の代表機関としての行為には該当しない、と考えることができる)
しかし、それでは法人の不法行為責任が発生するケースは存在しないことになってしまい、法人の不法行為責任の規定が無意味なものとなる。
そこで判例では、「職務を行なうにつき」という言葉を次のように広く解釈している。
1.外形上「職務行為」と見える行為は、「職務を行なうにつき」に含める。
2.社会通念上「職務行為に関連する行為」は「職務を行なうにつき」に含める。
このように「職務を行なうにつき」という言葉を広く解釈することにより、法人の不法行為責任が成立する範囲を拡大し、法人の不法行為による被害者を救済しているのである。
なお、職務行為という言葉は、上記の1.と2.を合わせた意味で使用されることがある。本来職務行為とは、上述のように法人の代表機関の正当な行為のことを指すのであるが、法人の不法行為責任を論じる場合には、法の規定が適用されるすべての行為(上記1.と2.)を「職務行為」と呼ぶことが多いので、注意したい。
法人は定款または寄付行為に定められた目的の範囲内で、権利を取得し、義務を負担することとされているので、法人の代表機関である理事はこの目的の範囲内で代表機関としての行為を行なうことができる。このような理事の行為のことを一般に「職務行為」と呼んでいる(法人の権利能力・行為能力を参照のこと)。
理事の職務行為が問題となるのは、法人が不法に他人に損害を与えた場合(=法人に不法行為責任が発生する場合)である。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条・民法第715条では「理事などの代表機関が職務を行なうにつき他人に加えたる損害は法人が賠償する責任を負う」と規定して、法人が不法行為責任を負うことを明記している(詳しくは法人の不法行為責任へ)。
しかし、仮に上記の「職務を行なうにつき」という言葉を厳格に解釈するならば、そもそも理事が不法に他人に損害を与える行為自体が「職務」の範囲から除外されるという問題が生じる。
(不法に他人に損害を与える行為は、もはや法人の代表機関としての行為には該当しない、と考えることができる)
しかし、それでは法人の不法行為責任が発生するケースは存在しないことになってしまい、法人の不法行為責任の規定が無意味なものとなる。
そこで判例では、「職務を行なうにつき」という言葉を次のように広く解釈している。
1.外形上「職務行為」と見える行為は、「職務を行なうにつき」に含める。
2.社会通念上「職務行為に関連する行為」は「職務を行なうにつき」に含める。
このように「職務を行なうにつき」という言葉を広く解釈することにより、法人の不法行為責任が成立する範囲を拡大し、法人の不法行為による被害者を救済しているのである。
なお、職務行為という言葉は、上記の1.と2.を合わせた意味で使用されることがある。本来職務行為とは、上述のように法人の代表機関の正当な行為のことを指すのであるが、法人の不法行為責任を論じる場合には、法の規定が適用されるすべての行為(上記1.と2.)を「職務行為」と呼ぶことが多いので、注意したい。