消滅時効
しょうめつじこう
一定期間、権利を行使しない状態が継続する場合に、債権などの権利が消滅するという定め。
消滅時効が完成するまでの期間は、権利の性質や権利行使しない事情に応じて異なる。主な権利の消滅時効完成期間は、次のとおりである。
1)債権
・権利行使できることを知った時から5年
・権利行使できる時から10年
2)債権または所有権以外の財産権については、権利を行使できる時から20年
3)不法行為に基づく損害賠償請求権
・損害及び加害者を知った時から3年
・不法行為の時から20年
4)人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権(特例)
・損害および加害者を知った時から5年(通常3年の特例)
・権利行使できる時(債務不履行の始期)から20年(通常10年の特例)
5)定期金債権
・権利行使できることを知った時から10年
・権利行使できる時から20年
なお、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)前まで、職業別の短期時効消滅および商事時効が定められていたが、これらの定めは改正によって削除され、債権の消滅時効に統合・整理された。
債権
私法上の概念で、ある人(債権者)が、別のある人(債務者)に対して一定の給付を請求し、それを受領・保持することができる権利をいう。
財産権の一つであり、物権とともにその主要部分を構成する。
所有権
法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利をいう。
物を全面的に、排他的に支配する権利であって、時効により消滅することはない。その円満な行使が妨げられたときには、返還、妨害排除、妨害予防などの請求をすることができる。
近代市民社会の成立を支える経済的な基盤の一つは、「所有権の絶対性」であるといわれている。だが逆に、「所有権は義務を負う」とも考えられており、その絶対性は理念的なものに過ぎない。
土地所有権は、法令の制限内においてその上下に及ぶとされている。その一方で、隣接する土地との関係により権利が制限・拡張されることがあり、また、都市計画などの公共の必要による制限を受ける。さらには、私有財産は、正当な補償の下に公共のために用いることが認められており(土地収用はその例である)、これも所有権に対する制約の一つである。
損害賠償
違法行為によって損害が生じた場合に、その損害を填補することをいう。
債務不履行や不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば損害賠償義務を負うことになる。その損害は、財産的か精神的かを問わず、積極的(実際に発生した損害)か消極的(逸失利益など)かも問わず填補の対象となる。
ただし、その範囲は、通常生ずべき損害とされ、当事者に予見可能性がない損害は対象とはならない(相当因果関係、因果の連鎖は無限に続くため、予見可能性の範囲に留めるという趣旨)。
損害賠償は原則として金銭でなされる。また、損害を受けた者に過失があるときは賠償額は減額され(過失相殺)、損害と同時に利益もあれば賠償額から控除される(損益相殺)。
なお、同じように損害の填補であっても、適法な行為(公権力の行使)によって生じた不利益に対する填補は、「損失補償」といわれて区別される。
債務不履行
債権・債務関係において、債務が履行されない状態をいう。
例えば、売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、売主が物件を引き渡さないときは、売主は引渡し義務を怠っていて、「債務不履行」にあたる。
このような債務不履行に対しては、法律(民法)により、債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができるとされている。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
なお、債務の履行に代わる損害賠償を請求するには、次の条件を満たすことが必要である。
1.債務の履行が不能であるとき。(履行不能・履行遅滞・不完全履行の3形態がある)
2.債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
3.債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。