保管振替制度
ほかんふりかえせいど
株券等の有価証券を保管振替機関が集中的に保管し、株券等の売買や配当金の受取りなどを口座の記載・記録によって行なう制度をいう。
しかし、株券電子化によってこの制度は発展的に廃止され、2009(平成21)年1月5日からはすべての株券等は口座によって管理され、振替機関による口座間の振替えによって売買されることとなった(「株券電子化」を参照)。
保管振替制度は、顧客が株券等を証券会社等に預託し(保護預り)、証券会社等は、顧客の承諾を得て預託された株券等をさらに保管振替機関に預託するという仕組みによって運営されていた。保管振替機関は、唯一、証券保管振替機構(ほふり)のみが指定されていたが、株券等電子化後の振替機関も証券保管振替機構のみ指定を受けている。
保管振替制度のもとでは、各顧客は顧客口座簿によって管理され、
1.株券等の売買は口座簿の記載内容の変更によって
2.配当、議決権などの権利行使は口座簿に従って顧客名が株式会社等に通知されること(実質株主等の通知)によって
なされていた。株券電子化は、このような制度の活用が大幅に進展した結果実現したのである(08年3月末には、全株券の84%が証券保管振替機構によって管理されている)。
なお、この制度の対象となる有価証券は、金融商品取引所に上場されている株式、新株予約権、新株予約権付社債、投資口、優先出資、投資信託受益権およびそれらに準ずるものであって、発行者の同意を得たものとされている。
有価証券
財産的な価値のある権利を表示する証券で、その権利の移転・行使には原則として証券の受渡・占有が必要とされるものをいう。
表示される権利の種類、権利と証券との結合の程度、権利の移転・行使における証券の役割などは、一様ではない。従って、有価証券を取り扱う場合には、その性格を具体的に把握しておく必要がある。
有価証券は、表示する権利の種類によって、例えば次のように分類されることが多い。
1.債権証券:債権を表示するもの。手形、小切手、社債、倉庫証券など。
2.物権証券:債権とともにその担保物権を表示するもの。例えば、質入証券、抵当証券など。
3.社員権証券:社団の社員としての地位を表示するもの。例えば、株券。
なお、金融商品取引法では証券等を具体的に列挙して「有価証券」を定義しているが、その定義は一般的に理解されている有価証券の範囲とは必ずしも一致していないので注意が必要である。
株券電子化
上場された株式の株券(上場投資証券および上場優先出資証券を含む)をすべて廃止して、株主権の管理を特定の口座で管理することで、株式のペーパーレス化を図ることである。
2009(平成21)年1月5日から実施された。
株主権を管理する口座は、証券保管振替機構(略称「ほふり」)および証券会社等に開設され、
1.株式等の売買は証券保管振替機構を通じた口座間の振替えによって
2.議決権、配当受領権などは証券保管振替機構からの通知によって作成される株主名簿に従って
それぞれ管理される。
なお、株券電子化の実施前に株券を証券会社等を通じて証券保管振替機構に預託した株主については、特別の手続きなしにその所有する株券が電子化される。また、株券を自ら保管している株主については、発行会社が株主名簿にもとづいて信託銀行等に自動的に特別口座を開設することによってその株券が電子化される が、売却に当たっては、株主は、証券会社等に新たに口座を開設する必要がある。
証券保管振替機構
上場株券等の保管・受渡しを合理化するために、1991(平成3)年に設立されたわが国唯一の機関。
2008(平成20年)年時点で発行株式の総数に対する預託率は9割超であった。2009(平成21)年1月5日からはすべての株券等は口座によって管理され、振替機関による口座間の振替えによって売買されることとなっている(「株券電子化」を参照)。
1984(昭和59)年11月に「株券等の保管及び振替に関する法律」が施行され、この法律にもとづき、1991(平成3)年10月より「保管振替制度」が実施されていた。
証券保管振替機構は、この保管振替制度にもとづくわが国唯一の保管振替機関であり、わが国の公開会社の発行済株式のうち90%以上の株券を預託されていた。
また2004(平成16)年時点、証券保管振替機構の取扱会社数は4,000社近くにのぼり、すべての公開会社の発行する株券等が取扱い対象となっていた。
証券保管振替機構の保管対象とする証券は、「上場株」「店頭株」「転換社債」「転換社債型新株予約権付社債」「株価指数連動型投資信託受益証券(ETF)」「投資証券」などである。
なお、証券保管振替機構の組織形態は当初は財団法人であったが、2002(平成14)年4月より株式会社に移行した。現在の正式名称は「株式会社証券保管振替機構」である。
ほふり
有価証券の取引を行なう場合の権利の振替を実施する組織。「(株)証券保管振替機構」の略称。
有価証券を特定の機関に集中保管し、その引渡しを帳簿上の記帳によって行なうしくみ(「保管振替制度」という)は、1984年に「株券等の保管及び振替に関する法律」に基づいて創設され、同年、その実施機関として、(財)証券保管振替機構が設立された。これが「ほふり」である。
「ほふり」が実施する保管振替事業は、1991年に一部の銘柄について開始され、1992年には全面的に実施されるに至った。これによって、上場株券等の保管・受渡しの合理化が急速に進展した。
2002年には「(株)証券保管振替機構」が設立され、保管振替事業が財団から会社に譲渡されるとともに、財団は解散した。「ほふり」が株式会社化された。
また、2002年に「社債、株式等の振替に関する法律」が施行された。同法によって、社債、株式等が電子化され、株券等の書面は廃止された。株主等の権利の管理(発生、移転および消滅)は、口座において電子的に行なうこととされたのである。
これに伴い、株式等の取引は口座間の振替として行なうことになったが、「ほふり」は、同法に基づく振替処理等を行なう機関(振替機関)に唯一指定され、業務を実施している。
投資口
不動産投資信託において、投資家が投資法人に出資する単位のこと。通常の会社における「株式」に相当する。
投資法人は、投資家からの出資を集めて設立される法人であり、投資家が投資法人に出資する単位のことを「投資口」と呼んでいる。また、投資口を保有する投資家は「投資主」と呼ばれる。
証券取引所に上場されている不動産投資信託の場合、投資口の1口の価格(すなわち投資主の最低の投資額)は、おおむね20万円から100万円程度となっている。
投資主は保有する投資口の口数に応じて、投資法人から分配金を受け取ることができる。
優先出資
出資のうち、普通の出資者に優先して配当を受けることのできる地位にある出資をいう。
一方で、優先出資者の議決権は大幅に制限される。
優先出資は、普通の出資者以外の不特定多数の者から投資を募るために募集され、それを証する証券(優先出資証券)は、株式における「優先株」に類似した性格の金融商品として取引される。
不動産の証券化においても、特定目的会社の社員ではあるが、特定目的会社の設立時の社員に先立って利益の配当または残余財産の分配を受けることのできる社員の地位(優先出資)が認められている。