買い戻し特約
かいもどしとくやく
不動産の売買契約の締結に当たって付加する特約であって、一定の期間、売主が代金額および契約の費用を買主に返還することによって売買契約を解除し、目的物を取り戻すことができることを内容とするもの。これによって、解除権を留保することになる。
この特約は、所有権移転登記と同時に登記しないと第三者に対抗できない。売主が買戻権を行使できる期間は最長10年(期間の定めがないときには5年)である。
買い戻し特約は、公共的な宅地分譲において、建築義務、転売規制などを担保するために利用される。また、買い戻し特約を付けて不動産を譲渡し、債務弁済を担保する(売渡担保)ために利用されることもある。
売買契約
当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。
売買契約は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。
また、売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。
さらに、売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。
当事者の双方の意思の合致により売買契約が成立したとき、売主には「財産権移転義務」が発生し、買主には「代金支払義務」が発生する。両方の義務の履行は「同時履行の関係」に立つとされる。
特約
特別の条件を伴った契約をすることをいう。
原則として契約条件の定め方は自由であるから、どのような条件が特別であるかについては判断の幅があるが、一般的な条件とは異なる利益を伴うものをさすと理解されている。
ただし、強行規定(法令によって当事者の合意如何にかかわらず適用される規定)に反する条件は当事者が合意しても無効である。
解除権
契約を解除する権利。民法で認められている権利である。
例えば、債務不履行、債務の履行不能、手付放棄、契約不適合などの場合に行使できる。
解除権の効力は、相手方に対する意思表示によって発生する。この意思表示は撤回できないとされている。また、解除は、一般に、期間を定めて債務の履行を催告し、その期間内に履行がないときにすることができるとされる。ただし、債務の履行が不能であるとき、債務者が債務の履行を拒絶する意思を表明しているときなど法律で定める一定の場合は、催告することなく直ちに解除できる。
解除権が行使されたときには、契約の当事者は、それぞれ相手方を現状に戻す義務を負う。ただし、第三者の利益を害することはできないとされている。また、解除権を行使した上で、損害賠償の請求をすることもできる。
なお、解除権を有する者が、故意、過失によって、契約の目的物を著しく損傷すること、加工・改造して他の種類のものに変えることなどをしたときには、その解除権は消滅する。
所有権移転登記
不動産の所有権を移転したときに、その旨を登記すること。法務局に申請し、登記簿の権利を表示する欄(権利部(甲区))に、登記目的が所有権移転であること、権利移転の原因・日付、移転先権利者の名義(必要に応じて持分割合)を記載する。
権利移転の原因には、売買、贈与、相続、共有物分割などがある。また、新築家屋のような新たな不動産の所有権を登記する場合は、「所有権保存登記」を行なうこととなる。
なお、土地と建物は別々に登記する。また、所有権移転登記は義務ではないが、登記がないと当該所有権について第三者に対抗することができない。
関連用語
再売買の予約
いったんAからBへ売却された物を、再びBからAへ売却することを予約すること。
具体的には、ある物をAからBへ売却する時点(第1売買の時点)において、「将来その物をBからAへ売却すること(第2売買)を事前に合意する」という予約を結んでおくのである。こうすることによって第1売買の売主であるAは、将来その物を取り返すことが可能となる。
再売買の予約は、融資に用いられることが多い。
例えばBがAに2,000万円を融資するとする。融資の担保がA所有の土地(2,000万円相当)であるとする。このとき次のような形で再売買の予約を用いる。
まずAがBに対して、この土地を売る(第1売買)。これによりAは2,000万円を得る(これが金を借りたことに該当する)。そして第1売買の際に「将来AがBに2,000万円を交付するならばBがその土地をAに再び売却する(第2売買)」という予約を結んでおく。
このように第1売買における買主Bは、土地の所有者となり、同時にBがAに2,000万円を交付する。これは見方を変えれば、Bが土地を担保にとって、Aに2,000万円を貸し付けた、と見ることができる。また予約(Aが土地を取り戻すという予約)に関しては、Aは予約完結権を仮登記することができるとされている。
売買一方の予約
売買一方の予約とは、将来において売買契約を締結することを事前に意思表示しておくことを指す(民法第556条)。
「予約」とは、将来において契約を締結するということを、事前に当事者同士で合意することを指す。「予約」においては、当事者の一方が予約完結権を持つのが一般的である。「売買一方の予約」もこのような「予約」の一つである。
(詳しくは予約へ)
「売買一方の予約」では、通常、将来の売買契約で買主となる者が予約完結権を持つ。「売買一方の予約」は、社会的には債権(金銭貸借)を担保する機能を営んでいる。
例えば、AがBに1,000万円を融資したとする。
この融資実行の際に、AとBの間で「AとBは、B所有の土地をAが購入するという売買契約を将来締結することを合意する。予約完結権を行使するのはAである。Aは、融資を返済すべき時期に融資が返済されないときは、その予約完結権を行使することができる」という予約を結んだとしよう。そうすると、仮にBが融資を返済しなかったならば、Aは予約完結権を行使することにより自動的にB所有の土地を取得することができる。
このように「売買一方の予約」を結んでおけば、融資が返ってこなくても、債権が保全されるということになるのである。なお、「売買一方の予約」における予約完結権は仮登記をすることができる。