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最終更新日:2018/11/27

他人物売買の制限

たにんぶつばいばいのせいげん

宅地建物取引業者が他人物を売ること(予約を含む)を禁止する定め。宅地建物取引業法に基づく制限である。

ただし、宅地建物取引業者が、売ろうとする他人物を確実に取得する旨の別の契約または予約(効力発生について条件付きのものを除く)を締結しているときには、他人物売買は禁止されていない。また、換地処分の公告以前の「保留地予定地」の売買契約や、第三者のためにする契約によって他人の所有権を直接に買主に移転することを宅地建物取引業者が実質的に支配している場合の売買契約についても、契約締結を禁止する規定は適用されない。

なお、宅地建物取引業者同士の売買については、この制限は適用されない。

-- 本文のリンク用語の解説 --

宅地建物取引業者

宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物取引業法第2条第3号)。 宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。
なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。

宅地建物取引業法

宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。

この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。

契約

対立する2個以上の意思表示の合致によって成立する法律行為のこと。

具体的には、売買契約、賃貸借契約、請負契約などのように、一方が申し込み、他方が承諾するという関係にある法律行為である。

他人物売買

他人の物を売買すること。民法では、他人の物を売買する契約も有効な契約であるとしている。

本来、他人の物を売買することは当初から不可能であるので、そのような売買契約の効力を無効とするという考え方もあり得る。しかしわが国の民法では、他人物の売買契約であっても、当事者間(売主と買主の間)では有効な契約であることを想定した規定が定められている。

他人物を売買したときには、売主は、権利を取得して買主に移転する義務がある。この義務を果たせない場合には、売主は契約不適合責任を負うこととなる。

この場合、履行の追完は無理であるから、損害賠償請求または契約解除権の行使によって契約不適合責任を追及することとなる

換地処分

土地区画整理事業において行なわれる、土地の権利変動等の効果を生じる行政処分をいう。これによって換地は従前の宅地とみなされる。

権利変動などの内容は換地計画に定められているが、換地処分によってそれが法的な効果として確定することとなる。

換地処分は原則として工事が完了した後に遅滞なく行なわれ、公告される。そして、公告の翌日から、従前の宅地の所有権等は、換地計画において定められた換地の所有権等に変わる。また、換地処分による土地や建物の変動は、事業施行者によって登記される。

なお、換地処分は、土地改良事業においても行なわれることがある。

保留地

土地区画整理事業を実施した際に、事業主体が取得する宅地のことを「保留地」という。

土地区画整理事業では、事業が施行される区域内のすべての宅地は、従来の宅地所有者に交付される新しい宅地(換地)となるのが原則である。
しかし、事業にかかる費用を捻出する等の目的のために、施行区域内の一部の宅地は換地とせず、その土地を事業主体が取得することができるとされている。このような土地を「保留地」という(土地区画整理法第96条)。

保留地は、将来的には事業主体が一般人に売却して、その売却代金を事業費用に充てることが多い。

所有権

法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利をいう。 物を全面的に、排他的に支配する権利であって、時効により消滅することはない。その円満な行使が妨げられたときには、返還、妨害排除、妨害予防などの請求をすることができる。
近代市民社会の成立を支える経済的な基盤の一つは、「所有権の絶対性」であるといわれている。だが逆に、「所有権は義務を負う」とも考えられており、その絶対性は理念的なものに過ぎない。

土地所有権は、法令の制限内においてその上下に及ぶとされている。その一方で、隣接する土地との関係により権利が制限・拡張されることがあり、また、都市計画などの公共の必要による制限を受ける。さらには、私有財産は、正当な補償の下に公共のために用いることが認められており(土地収用はその例である)、これも所有権に対する制約の一つである。
-- 関連用語 --
自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限

宅地建物取引業者が、他人物や未完成物件を売ることを原則的に禁止するという規制のこと。これは、一般消費者を保護するための措置である(宅地建物取引業法第33条の2)。

1.概要
「自己の所有に属しない宅地又は建物」とは他人物と未完成物件を指している。
他人物の売買は、民法上は可能とされているが、一般消費者にとってはそのような取引を行なうことは危険性が高い。未完成物件の取引も同様である。そこで宅地建物取引業法では、そのような他人物・未完成物件の売買取引を、原則的に禁止しているのである。

2.他人物売買の制限
宅地建物取引業法では他人物売買について、原則的に禁止する措置を取っている(法第33条の2本文)。

具体的には、宅地建物取引業者は、他人の所有物について、自らが売主になるような「売買契約」を締結することができない。また、宅地建物取引業者は、他人の所有物について、自らが売主になるような「予約」を締結することもできないとされている。

ただし、「他人物を確実に取得できるという別の契約または予約」があるときには、他人物の売買契約または予約を締結してよいという例外規定がある(法第33条の2第1号)(詳細については「他人物売買の制限」へ)。

3.未完成物件の売買の制限
未完成物件を造成中・工事中の段階で販売することは、「自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結」に該当するので、原則的に禁止されている(法第33条の2本文)。
しかし仮に、造成中における宅地分譲・工事中における建物分譲がまったく行なえないことになっては不動産実務上、非常に不便なことは明らかである。

そこで、宅地建物取引業法では「未完成物件に関する手付金等の保全措置」が行なわれている未完成物件については、造成中・工事中であっても、未完成物件の売買契約または予約を締結してよいこととしている(法第33条の2第2号)(詳細については「未完成物件の売買の制限」へ)。

4.適用範囲
宅地建物取引業者が売主で、宅地建物取引業者以外の者が買主になる場合についてのみ適用されることになっている(法第78条第2項)。

5.違反に対する罰則
「自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限」(法第33条の2)に違反した場合には、宅地建物取引業法の監督処分として「指示処分」または「業務停止処分」が予定されている。
なお、「自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限」に違反した売買契約(予約含む)の効力については、宅地建物取引業法にはこれを無効とする規定がないので、そのまま有効な売買契約(予約含む)として取り扱われることになる。