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最終更新日:2023/10/24

東京ルール

とうきょうるーる

東京都議会で2004(平成16)年3月31日に可決成立し、2004(平成16)年10月から東京都内で施行された「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」において示された、住宅の賃貸借の紛争防止のためのルール(ガイドライン)のこと。

東京都住宅局は2004(平成16)年2月6日『民間賃貸住宅に関する「東京ルール」の推進について』とする方針を公表し、民間賃貸住宅に関して、退去時の敷金の精算や入居期間中の修繕をめぐる紛争など、多くの相談が寄せられていることから、紛争の未然防止を図るため、契約時点での的確な説明を義務付けた全国初の条例を策定する方針を明らかにした。
(なおこのとき同時に、「戦後の住宅難等を背景に地域的に始まったとされる礼金更新料については、それらの授受のない契約を普及させ、円滑な住替えを促進する」ことも言明している)

このような東京都住宅局の方針を受けて、東京都議会で2004(平成16)年3月31日に可決成立し、2004(平成16)年10月1日から東京都内で施行されている条例が「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」である。この条例では、おおよそ次のことを定めている。

1.重要事項説明における説明義務の加重(条例第2条関係)
宅地建物取引業者は、住宅の賃貸借の代理または媒介をする場合は、当該住宅を借りようとする者に対して法第35条第1項の規定により行なう同項各号に掲げる事項の説明に併せて、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
1)退去時における住宅の損耗等の復旧ならびに住宅の使用および収益に必要な修繕に関し東京都規則(以下「規則」という。)で定める事項
2)前号に掲げるもののほか、住宅の賃貸借に係る紛争の防止を図るため、あらかじめ明らかにすべきこととして規則で定める事項

2.指導・勧告・公表(条例第5条・第6条関係)
知事は、宅地建物取引業者に対し、説明を行ない、または報告もしくは資料の提出をし、もしくは報告もしくは資料の内容を是正するよう指導および勧告をすることができる。
知事は、勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
知事は、公表をしようとする場合は、当該勧告を受けた者に対し、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えるものとする。

-- 本文のリンク用語の解説 --

敷金

建物の賃貸借契約を新規に締結する際に、借主から貸主に対して、次のような目的のために預けられる金銭。

1.賃料の不払い・未払いに対する担保
2.契約により借主が負担すべき修繕費用や原状回復費用の前払い

将来契約が終了した場合には、上記1や2の金額を控除した残額が、借主に対して退去後に返還される。なお、関西等では「敷引」の慣行がある。

礼金

建物の賃貸借契約を新規に締結する際に、借主から貸主に対して、契約締結の謝礼として支払われる金銭。将来契約が終了し、退去する際にも、借主に返還されない。

更新料(建物賃貸借における〜)

建物の賃貸借契約を更新する際に、借主から貸主に対して支払われる金銭をいう。 支払いを求めるためには、支払いについての合意が必要である。 なお、更新料をめぐっては、その支払い合意は無効であるとの訴訟が提起されているが、最高裁判決(平成23年7月15日、第二小法廷)は、 1.更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払い、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当 2.更新料の支払いには、およそ経済的合理性がないなどということはできず、また、一定の地域において、期間満了の際に賃借人が賃貸人に対し更新料の支払いをする例が少なからず存することは公知であること、裁判上の和解手続き等においても、更新料条項は公序良俗に反するなどとしてこれを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことに照らすと、賃借人と賃貸人との間に更新料条項に関する情報の質および量ならびに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることはできない 3.賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当 として、一定の条件のもとでその適法性を認めた。

重要事項説明

宅地建物の取引において、宅地建物取引業者が取引当事者に対して契約上重要な事項を説明することをいう。 また、その際に、説明の内容を記載して当事者に交付する書面を重要事項説明書という。

重要事項説明を必要とするのは、宅地建物取引業者が自ら売主として取引する場合、および不動産取引を代理・媒介する場合であり、その説明は、売買契約や賃貸借契約を締結するよりも前に行なわなければならない。また、説明に当たるのは宅地建物取引士でなければならず、さらには、説明する重要事項をすべて書面に記載し、取引当事者にその書面(重要事項説明書)を交付する必要がある(相手方の同意を得たうえで電磁的方法で書面を交付し、IT(インターネット等)を用いた説明を行なうこともできる)。

説明を要する事項は、売買か賃貸かなどの取引内容に応じて異なるが、大きく分けて、 1.取引対象不動産の権利関係、2.取引対象不動産に係る法令上の制限、3.取引対象不動産の状態やその見込み、4.契約の条件 に関する事項とされている(詳細は必ず直接に法令(宅地建物取引業法第35条およびその関連法令)に当たって確認されたい。また、臨機に改正も予想されるので留意が必要である)。

重要事項説明は、不動産の特性や取引の形態に起因して取引当事者に不利益が発生することを防ぐための仕組みとされ、その適正な実施が強く求められている。

宅地建物取引業者

宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物取引業法第2条第3号)。 宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。
なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。

代理(宅地建物取引業法における〜)

不動産取引における宅地建物取引業者の立場(取引態様)の一つ。

宅地建物取引業者が、売買取引・交換取引・賃貸借取引について、売主の代理人や買主の代理人となって(または貸主の代理人や、借主の代理人となって)、取引成立に向けて活動するという意味である。

媒介

私法上の概念で、他人間の契約等法律行為の成立に向けて行う事実行為をいう。代理や取次と違って、法律行為ではないとされる。

不動産取引における宅地建物取引業者の立場(取引態様)の一つでもあり、不動産の売買・交換・賃貸借について、売主と買主(または貸主と借主)との間に立って取引成立に向けてなす活動がこれに該当する。

なお、「仲介」は「媒介」と同じ意味である。