最終更新日:2018/4/11
損失補償(土地収用法における〜)
そんしつほしょう(とちしゅうようほうにおける〜)収用により、土地や物件を収用された場合、土地や物件に関する従前の権利は消滅する。この経済的損失に対する対価として支払われるものを「損失補償」という。
損失補償は、土地に対する補償(土地収用法第71条)、土地に関する所有権以外の権利に対する補償(同法第71条)、残地補償(同法第74条)、みぞかき補償(同法第75条)、土地上の物件の(同法第77条)、物件の補償(同法第80条)、その他の通常損失(同法第88条)などに大きく分けられる。
損失補償を受けることができるのは、土地所有者と関係人である(土地収用法第68条)。(ただし、収用した土地の隣地等が損失を受ける場合がある。この場合は土地所有者・関係人以外の者が損失補償を受けることができる(土地収用法第93条))。
手続き面では、収用委員会による収用の裁決で、損失補償の内容と、権利取得の時期を決定する(土地収用法第48条、第49条)。この裁決に従い、収用者(起業者)が、権利取得の時期までに金銭払い等を行なうことにより、権利取得の時期において、土地や物件に関する従前の権利が消滅することになる。
損失補償では、「個別払いの原則」が設けられている。損失補償は土地所有者や関係人の各人に個別に別々に支払わなければならないが、例外として各人別に見積もることが困難であるときは、複数人をまとめて支払うことも許される(土地収用法第69条)。
また、損失補償は金銭で支払うことが必要である(金銭払いの原則)。しかし替地による補償、耕地の造成、工事の代行による補償、移転先の代行による補償、宅地の造成といういわゆる現物補償が行なわれる場合もある。これらの現物補償は、収用委員会の裁決によって行なう(土地収用法第70条、第82条から第86条まで)。
なお、土地収用を行なう事業が変更・廃止された場合には、それによって損失を被った土地所有者・関係人が損失補償を受けることができる(土地収用法第92条)。
所有権
近代市民社会の成立を支える経済的な基盤の一つは、「所有権の絶対性」であるといわれている。だが逆に、「所有権は義務を負う」とも考えられており、その絶対性は理念的なものに過ぎない。
土地所有権は、法令の制限内においてその上下に及ぶとされている。その一方で、隣接する土地との関係により権利が制限・拡張されることがあり、また、都市計画などの公共の必要による制限を受ける。さらには、私有財産は、正当な補償の下に公共のために用いることが認められており(土地収用はその例である)、これも所有権に対する制約の一つである。
残地補償
みぞかき補償
このとき起業者は、これに要する費用を損失補償しなければならない。これを一般的に「みぞかき補償」と呼んでいる(土地収用法第75条)。
この「みぞかき補償」は、起業者自らが工事を代行することがある。
関係人(土地収用における〜)
土地を収用する場合、関係人は、「土地に関する関係人」と「物件に関する関係人」に分かれる。「土地に関する関係人」は、土地に関し、地上権、賃借権、抵当権、仮登記上の権利、登記された買戻し権、登記された差押債権、登記された仮差押債権を有するものである。
「物件に関する関係人」は、物件に関して、所有権や、土地に関する関係人と同様の権利を有するものである。物件に関する関係人では、建物所有者、工作物所有者、立木所有者、借家人等も含まれることに注意したい。
また土地ではなく、物件のみの収用、地上権等の権利のみの収用なども行なわれることがある。この場合の関係人も、土地を収用する場合と同様である。
なお、関係人に含まれないが、意見書を提出できる者として「準関係人」が定められている(詳しくは「準関係人」へ)。
耕地の造成(土地収用法における〜)
替地による補償を要求する際、収用される土地が「耕作目的」であるときは、替地となるべき土地について、耕地の造成を行なうように要求できる。これを「耕地の造成」という(土地収用法第83条)。この耕地の造成は、権利取得裁決で裁決される。