最終更新日:2017/12/8
ビークル(Vehicle)
びーくる資産の証券化などに際して、資産と投資家とを結ぶ機能を担う組織体をいう。
資産から生じる利益を投資家に運ぶことから、乗り物や媒体を意味するVehicleと呼ばれる。あるいは、実物資産ではなく資産の価値を保有することに着目して、「器(うつわ)」と呼ばれることもある。
ビークルの形は、特定目的会社等の会社組織、特定目的信託等の信託、匿名組合等の組合組織など、多様である。その主要な機能は、リスクを資産の範囲に限定すること(倒産隔離機能)、および、生じる利益に対する二重課税を回避すること(パススルー機能、導管体機能などと呼ばれる)である。
法的な形式を備えることが重要で、通常、資産管理、証券発行などの実務は、そのほぼすべてが外部に委託される。
特定目的会社
その重要な機能は、証券化の対象になる資産を独立させ、責任を資産価値の範囲内に限定すること(倒産隔離機能)、および、投資家への二重課税を回避するための器となること(導管体機能)である。資産の管理運用などの具体的業務は、一定の要件を備えた会社等に委託される。
なお、資産の流動化に関する法律では、資産流動化の方法として、特定目的会社を用いる場合のほか、特定目的信託を用いる場合を規定している。
特定目的信託
「資産の流動化に関する法律(資産流動化法)」によって制度化されており、対象特定資産の保有者は、信託契約締結時に、信託受益権を分割して複数の者に取得させることを目的とする旨定めて、当該資産を流動化する仕組みである。特定目的会社とほぼ同様の機能を発揮することができる。
倒産隔離
企業が倒産すると、債権者や管財人は倒産企業が保有する資産や株主議決権などを活用して債権回収を図るが、SPEの保有・運用する資産に対してそのような追及が及べば投資家の利益を損なうことになる。倒産隔離は、そのような追及を防いで、保有・運用資産を法的に保護する仕組みである。
例えば、SPE自身の倒産リスクに対しては、他業規制(当初目的事業以外の禁止)などのほか、議決権を有する出資者を有限責任中間法人やケイマンSPC(ケイマン島に設立した特殊な法人)に限定して公正な第三者のみが議決権を持つようにする手法などが、オリジネーター(Originator)の倒産リスクに対しては、真正売買を確保するなどの方法が採用されている。
導管体
通常、法人が事業利益を得るとその利益に対して法人税が課せられるが、税を支払えば投資家に配分できる利益は減少する。そこで、事業目的を投資家に利益を配分することに限定したSPEについては、一定の要件を満たせば法人税を課さないこととされている。その要件を満たすSPEは導管体としての機能を有することになる。
導管体には二つの種類がある。
一つは、その性格からそもそも法人税が非課税のもので、任意組合、匿名組合、信託(特定目的信託等は除く)がこれに相当する(パス・スルー型)。
もう一つは、法人税は課税されるが投資家に配分する利益を損金として控除できるため結果として課税されないもので、資産流動化法による特定目的会社や特定目的信託、投資信託および投資法人法による投資法人がこれに相当する(ペイ・スルー型)。この場合、配当可能所得額の90%を超える部分を配当に当てなければならないとされている。
いずれの場合も、利益を配分された投資家に対して課税されるのは当然である。
Special Purpose Entityの略で、資産(不動産)を証券化するための事業体を総称していう。
「特別目的事業体」と訳される。資産(不動産)を保有、運用し、収益を得て、それを投資家に配分する役割を果たす。投資収益を投資家に運搬するというイメージから「ビークル(SPV(Special Purpose Vehicle)」といわれることもある。
特定目的会社(SPC)、投資法人のような特別の法律にもとづく事業体のほか、株式会社、合同会社、任意組合、匿名組合など、その形態はさまざまである。信託もその一つと考えてよい。
SPEがその役割を果たすためには、
1.得た利益をそのまま投資家に配分できること(導管体としての機能)
2.関係者の倒産等の影響が保有・運用する資産(不動産)に及ばないこと(倒産隔離の機能)
3.資産(不動産)の保有・運用におけるリスクとリターンが透明であること
の3つの要件を満たす必要があるとされる。