導管体
どうかんたい
資産(不動産)の証券化に当たってSPEが満たすべきとされる要件の一つで、資産(不動産)から得られた利益をそのまま投資家に配分するための機能をいう。
通常、法人が事業利益を得るとその利益に対して法人税が課せられるが、税を支払えば投資家に配分できる利益は減少する。そこで、事業目的を投資家に利益を配分することに限定したSPEについては、一定の要件を満たせば法人税を課さないこととされている。その要件を満たすSPEは導管体としての機能を有することになる。
導管体には二つの種類がある。
一つは、その性格からそもそも法人税が非課税のもので、任意組合、匿名組合、信託(特定目的信託等は除く)がこれに相当する(パス・スルー型)。
もう一つは、法人税は課税されるが投資家に配分する利益を損金として控除できるため結果として課税されないもので、資産流動化法による特定目的会社や特定目的信託、投資信託および投資法人法による投資法人がこれに相当する(ペイ・スルー型)。この場合、配当可能所得額の90%を超える部分を配当に当てなければならないとされている。
いずれの場合も、利益を配分された投資家に対して課税されるのは当然である。
不動産
不動産とは「土地及びその定着物」のことである(民法第86条第1項)。
定着物とは、土地の上に定着した物であり、具体的には、建物、樹木、移動困難な庭石などである。また土砂は土地そのものである。
SPE
Special Purpose Entityの略で、資産(不動産)を証券化するための事業体を総称していう。
「特別目的事業体」と訳される。資産(不動産)を保有、運用し、収益を得て、それを投資家に配分する役割を果たす。投資収益を投資家に運搬するというイメージから「ビークル(SPV(Special Purpose Vehicle)」といわれることもある。
特定目的会社(SPC)、投資法人のような特別の法律にもとづく事業体のほか、株式会社、合同会社、任意組合、匿名組合など、その形態はさまざまである。信託もその一つと考えてよい。
SPEがその役割を果たすためには、
1.得た利益をそのまま投資家に配分できること(導管体としての機能)
2.関係者の倒産等の影響が保有・運用する資産(不動産)に及ばないこと(倒産隔離の機能)
3.資産(不動産)の保有・運用におけるリスクとリターンが透明であること
の3つの要件を満たす必要があるとされる。
法人
私法上の概念で、自然人以外で、法律上の権利・義務の主体となることを認められた団体・財産をいう。
法人の設立は、法律の規定によらなければならないとされている。
例えば、一般社団法人、一般財団法人、株式会社、学校法人、宗教法人、管理組合法人などはすべて法人である。
法人税
国税の一つで、法人の所得金額などを課税標準として課される税金をいう。
納税義務を負うのは、すべての国内法人(ただし、公益法人等や人格のない社団等については、収益事業を営む場合などに限る)および国内源泉所得がある外国法人である。
課税の対象となるのは、原則として各事業年度の法人の所得であり、益金と損金の差を一定の規則に従って算出して求めることとされている。その算出のための経理が税務会計であるが、連結の扱い、圧縮記帳などの特例、各種特別控除等々、税技術的な詳細な規定に従わなければならない。
また、税率は原則として一律(23.2%)であるが、一部特例がある。
信託
財産権の移転その他の処分をなし、他人をして一定の目的に従いその財産の管理または処分をなさしめることをいう。
契約または遺言により自由に設定できる。ただし、信託を営利事業として営む場合にはさまざまな規制がある。
信託を構成するのは、特定の財産(信託財産)、財産を引き渡して管理・処分をなさしめる者(委託者)、それを委ねられる者(受託者)、その目的(信託目的)、そしてその目的に応じて成果を得る者(受益者)である。これによって、信託財産の所有権・管理処分権は受託者に帰属する一方、財産から生じる経済的な利益は受益者に帰属する。
信託の機能としては、受託者による有効な財産管理の実現(財産管理機能)、財産からの受益権の分離(転換機能)、財産が受委託者の財産から隔離・保護されること(倒産隔離機能)が重要である。また、受益者は委託者と別に存在する(もちろん委託者自身を受益者として指定してもよい)ため、信託契約の定めによって、受益する権利(信託受益権)を流通させることもできる。
委託者が自らを受益者として不動産を信託し、その後に受益権を分割して流通させれば、不動産の流動化・証券化が実現する。SPCに対応するのが受託者、SPCの発行する証券に対応するのが信託受益権証書であると考えればわかりやすい。実際にも、信託を活用した不動産の流動化・証券化の例は多い。
なお、信託の仕組みを定めた法律(信託法、1922(大正11)年制定)が、2006(平成18)年に制定以来初めて本格的に改正され、その活用の幅は大きく広がった。
資産の流動化に関する法律(資産流動化法)
特定目的会社または特定目的信託を用いて資産を流動化するための仕組みを定めた法律(1998(平成10)年6月公布)。SPC法ともいわれる。
特定目的会社(SPC)や特定目的信託が、不動産などの資産を保有・運用し、その収益を裏付けとして証券や信託受益権を発行する(これにより資産が流動化される)場合の手続きやルールを決めている。
当初、流動化の対象となる資産が限定されていたが、2001(平成13)年4月の改正で、すべての財産権を対象とした流動化が可能となった。資産の有効的な活用や、多様な金融商品の開発に当たって重要な役割を果たす法律である。
特定目的会社
特定の資産を裏付けとした有価証券を発行するためだけに設立された法人で、「資産の流動化に関する法律」にもとづいて設立される特別な社団をいう。
SPC(Special Purpose Company)の中に包括され、TMKと略称されることもある。不動産の証券化などのために活用される一種のペーパーカンパニーであり、資産処分とともに解散される。
その重要な機能は、証券化の対象になる資産を独立させ、責任を資産価値の範囲内に限定すること(倒産隔離機能)、および、投資家への二重課税を回避するための器となること(導管体機能)である。資産の管理運用などの具体的業務は、一定の要件を備えた会社等に委託される。
なお、資産の流動化に関する法律では、資産流動化の方法として、特定目的会社を用いる場合のほか、特定目的信託を用いる場合を規定している。
特定目的信託
不動産証券化手法の一つで、資産の流動化を目的とした信託をいう。
通常SPT(Special Purpose Trust)といわれる。
「資産の流動化に関する法律(資産流動化法)」によって制度化されており、対象特定資産の保有者は、信託契約締結時に、信託受益権を分割して複数の者に取得させることを目的とする旨定めて、当該資産を流動化する仕組みである。特定目的会社とほぼ同様の機能を発揮することができる。
投資法人(投資信託における)
会社型投資信託において、投資家の資金によって投資を行なう主体となる法人をいう。
その構成員は投資主であるが、意思決定機関として投資主総会、業務遂行機関として役員会が設置されている。
投資法人の設立には内閣総理大臣への登録が必要で、出資総額は1億円以上とされるなど、一定の要件を満たさなければならない。また、投資法人は、投資主に対して会計情報等を開示するなど、その業務運営に関して規制があり、金融商品取引法等によって金融庁等の監督を受ける。
なお、投資法人による投資運用は、実際には、投資信託委託業者が行なっている。例えば、不動産投資信託(JREIT)の場合には、不動産と金融に詳しい専門家がこれに当たることが多い。