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最終更新日:2017/12/8

脅迫

きょうはく

私法上の概念で、人に恐怖心を抱かせて自由な意思決定を妨げる行為をいう。

強迫は不法行為とされ、強迫によってなされた意思表示は取り消すことができる。この場合、第三者への対抗も有効のほか、損害賠償請求なども可能である。
なお、「脅迫」は刑法上の用語で強迫とは別の概念であるが、事実上重なることが多い。

また、心理学で使われる「強迫」は全く別の用語である。

-- 本文のリンク用語の解説 --

私法

法のうち市民相互の関係を規律付けるものをいう。 国民と国家との関係を規律付けるのが「公法」であり、法の体系は、私法と公法の大きな2つの類型に分けることができる。

私法は、市民の相互関係を対象とする規律であるから、自由平等の関係を基盤に、私益を調整することを目的とする。一方、公法は、支配服従の関係を定めて公益の実現をめざすことに特徴があるとされる。

私法の一般法は民法である。民法の基本原理は、 1.法の下の平等、2.私的財産権の絶対性、3.契約自由の原則(私的自治)、4.過失責任主義 であるとされるが、これらの原理はいずれも私法の基本的な特徴でもある。私法を構成する代表的な法律は、民法のほか、借地借家法、商法、会社法などである。

私法と公法とを区分することに対しては、私的活動に対する行政の関与が拡大することに伴って両者を区分する必然性が薄れたこと、労働法や産業法のような公益上の理由で市民相互の関係を規律付ける法律分野(社会法といわれ、私法と公法の中間的な性格を持つとされる)が出現したことなどにより、その意味を失ったという意見もあるが、法の本質的な性格を明確にする基本的な視点を提供すること、法概念を分析するための基盤となることなど、区分することの理論的な有効性はいまなお失われていない。

不法行為

他人の権利・利益を違法に侵害したことによって損害を与える行為をいう。 このような行為によって生じた損害については、当事者間の契約関係の有無にかかわらず、加害者が被害者に賠償する責任を負わなければならない(被害者は、加害者に賠償を請求する債権を得る)。

不法行為が成立するには、一般の原則として、 1.加害者の故意または過失に基づく行為であること、2.他人の権利または法律上保護される利益を侵害したこと、3.現に損害が発生し、その損害の発生と行為との間に因果関係があること、4.加害者に責任能力があること という要件を満たさなければならず、1.から3.の立証責任は、損害賠償を請求する者が負う。

しかし、要件1.の過失については、特殊なケースについて特例がある。例えば、建物などの工作物の設置・保全に瑕疵があって他人に損害を与えた場合(工作物責任)は、その占有者が賠償責任を負うが、損害が生じないよう十分に注意していたかどうか(無過失である)の立証責任は加害者が負うとされる。原則は被害者が立証しなければならないとされているため、責任が転換されるのである。さらには、占有者が無過失であるときには、賠償責任は所有者が負うことになる。しかも、所有者は無過失であっても責任を逃れることはできないとされる(無過失責任)。このように、工作物など他者に危険を与える恐れのあるものに関しては、不法行為の責任をより強く求めるのが通例である(危険責任の考え方)。
そのほか、雇用された者が他人に損害を与えたときの雇用主の責任(使用者責任)のように、利益を得る過程で与えた損害については、より強く責任を負うべきであるとされている(報償責任の考え方)。公害被害に対する賠償責任、製造物責任などは、報償責任の考え方を法定したものと捉えることもできよう。

さらには、一般の不法行為原則においても、過失の有無の判断は争いになりやすい。大まかに言えば、単に不注意であるというのではなく、損害が予測できることを前提に(予見可能性)、その予見できた損害を回避する行為義務(結果回避義務)を怠ったという客観的な行為義務違反をもって過失と認定される。

不法行為によって賠償すべき損害は、財産的損害のみならず精神的苦痛も損害と認められる(これに対する賠償が慰謝料である)。また、賠償請求権は、損害および加害者を知ったときから3年、不法行為がなされたときから20年で時効消滅する。

なお、公権力の行使または公の営造物の設置管理の瑕疵による損害の賠償については、別に法律の規定があり(国家賠償法)、公権力の行使については故意・過失および違法を責任要件としているが、公の造営物の設置管理の瑕疵(例えば、通常有すべき安全性を欠く場合)に関しては無過失責任としている。

意思表示

一定の法律効果を欲するという意思を外部に表示することである。
意思表示は次の3つの部分から構成されている。

1.内心的効果意思
具体的にある法律効果を意欲する意思のこと。例えば、店頭で品物を買おうと意欲する意思が内心的効果意思である。

2.表示意思
内心的効果意思にもとづいて、その意思を表示しようとする意思のこと。
例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を伝えようとする意思である。
(なお、表示意思を内心的効果意思に含める考え方もある)

3.表示行為
内心的効果意思を外部に表示する行為のこと。
例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を告げることである。

なお、内心的効果意思のもととなった心意は「動機」と呼ばれる。例えば、品物を家族にプレゼントしようという意図が「動機」である。しかし、現在は判例・通説では「動機」は原則として、意思表示の構成要素ではないとされている。

損害賠償

違法行為によって損害が生じた場合に、その損害を填補することをいう。

債務不履行や不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば損害賠償義務を負うことになる。その損害は、財産的か精神的かを問わず、積極的(実際に発生した損害)か消極的(逸失利益など)かも問わず填補の対象となる。
ただし、その範囲は、通常生ずべき損害とされ、当事者に予見可能性がない損害は対象とはならない(相当因果関係、因果の連鎖は無限に続くため、予見可能性の範囲に留めるという趣旨)。

損害賠償は原則として金銭でなされる。また、損害を受けた者に過失があるときは賠償額は減額され(過失相殺)、損害と同時に利益もあれば賠償額から控除される(損益相殺)。

なお、同じように損害の填補であっても、適法な行為(公権力の行使)によって生じた不利益に対する填補は、「損失補償」といわれて区別される。