不動産登記法
ふどうさんとうきほう
不動産の表示及び不動産に関する権利の公示のための登記制度を定めた法律。不動産登記制度は、1889(明治32)年に制定された旧不動産登記法によって創設されたが、2004(平成16)年にこれが全面改正され、2005(平成17)年3月7日から現行の不動産登記法が施行されている。
不動産登記法は、登記できる権利等、登記順位、登記所、登記記録、登記手続、登記事項の証明、筆界確定などについて定めている。たとえば、登記できる事項は、不動産(土地または建物)の表示のほか、不動産に係る所有権、地上権、抵当権、賃借権など一定の権利についての保存、設定、移転、変更、処分の制限、消滅についてである。
不動産
不動産とは「土地及びその定着物」のことである(民法第86条第1項)。
定着物とは、土地の上に定着した物であり、具体的には、建物、樹木、移動困難な庭石などである。また土砂は土地そのものである。
登記所
登記事務を担当する機関のこと。
一般名称として「登記所」と呼んでいるが、正式名称は「法務局」、「地方法務局」、「支局」、「出張所」である。
登記記録
一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記の記録のこと。
従来は紙であったため「登記用紙」と呼ばれていたが、現在はほとんどの登記所でハードディスク上のデータとなっているため、現在の不動産登記法では「登記記録」という用語が使用されている(不動産登記法第2条第5号)。
登記事項証明書
一筆の土地、一個の建物ごとに記録されている登記記録の全部または一部を、登記官が公的に証明した書面のこと。
従来は登記記録(登記用紙)が紙で調製されていたため、その写しを交付しており、これを登記簿謄本と呼んでいた。しかし、現在は登記事務が電子化されたため、登記記録は磁気ディスク上に調製されている。この電磁的な登記記録の記載事項を公的に証明したものが、登記事項証明書である。
なお、遠隔地の不動産に関する登記事項証明書であっても、登記情報交換システムを通じて最寄りの登記所でその交付を受けることができる。
所有権
法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利をいう。
物を全面的に、排他的に支配する権利であって、時効により消滅することはない。その円満な行使が妨げられたときには、返還、妨害排除、妨害予防などの請求をすることができる。
近代市民社会の成立を支える経済的な基盤の一つは、「所有権の絶対性」であるといわれている。だが逆に、「所有権は義務を負う」とも考えられており、その絶対性は理念的なものに過ぎない。
土地所有権は、法令の制限内においてその上下に及ぶとされている。その一方で、隣接する土地との関係により権利が制限・拡張されることがあり、また、都市計画などの公共の必要による制限を受ける。さらには、私有財産は、正当な補償の下に公共のために用いることが認められており(土地収用はその例である)、これも所有権に対する制約の一つである。
地上権
工作物又は竹林を所有する目的で、他人の土地を使用する権利のこと(民法第265条)。
土地賃借権と地上権は非常によく似ているが、次のような違いがある。
1.土地賃借権は債権だが、地上権は物権である
2.地上権は、土地所有者の承諾がなくても、他人に譲渡することができる。
3.地上権を設定した土地所有者には登記義務があるので、地上権は土地登記簿に登記されているのが一般的である。
抵当権
債権を保全するために、債務者(または物上保証人)が、その所有する不動産に設定する担保権のこと。債務者(または物上保証人)がその不動産の使用収益を継続できる点が不動産質と異なっている。
債権が弁済されない場合には、債権者は抵当権に基づいて、担保である不動産を競売に付して、その競売の代金を自己の債権の弁済にあてることができる。
賃借権
賃貸借契約によって得られる借主の権利をいう。
借主は契約の範囲で目的物を使用し収益できる一方、貸主に賃料を支払わなければならない。民法上、債権とされる。
賃借権は債権であるので、
1.登記しなければ第三者に対抗できない(賃貸人に登記義務はなく、登記がなければ対抗要件を欠くので、例えば目的物が譲渡されると新たな所有者は賃借権に拘束されない)
2.賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡・転貸ができない(承諾なしに第三者に使用・収益させたときには賃貸人は契約を解除できる)
など、物権に比べて法的な効力は弱い。
しかし、不動産の賃借権は生活の基盤であるため、賃借人の保護のために不動産の賃借権について特別の扱いを定めている(賃借権の物権化)。
すなわち、対抗力については、借地に関してはその上の建物の保存登記、借家に関しては建物の引渡しによって要件を満たすこととした。また、譲渡・転貸の承諾については、借地に関しては、建物買取請求権を付与し、さらには裁判所による承諾に代わる譲渡等の許可の制度を設け、借家に関しては造作買取請求権を付与した(いずれも強行規定である)。
そのほか、契約の更新拒絶や解約において貸主の正当事由を要件とすることを法定化し、判例においては、賃借権の無断譲渡・転貸を理由とした契約解除を厳しく制限する、賃借権にもとづく妨害排除請求権を承認するなど賃借人保護に配慮している。
一方で、借地借家の供給促進の観点から定期借地権、定期借家権が創設され、賃借権の多様化が進みつつある。