不動産鑑定評価基準
ふどうさんかんていひょうかきじゅん不動産鑑定士が不動産を鑑定評価するときに常に準拠すべき規範。国土交通省が制定している。1964年に初めて制定された。現行の評価基準は、2002年に全部改正されたもので、その後も一部改正が加えられている。
不動産鑑定評価基準は、評価の実質的かつ統一的な規範とされており、これに準拠しない鑑定は不適切である。また、準拠しない鑑定を行なった不動産鑑定士は、懲戒処分に処せられることがある。
不動産鑑定評価全般にわたる実務指針である「総論」と不動産の種別及び類型に応じた評価手法等の具体的な指針である「各論」で構成されている。
総論では、例えば、不動産の鑑定評価とは「現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」を的確に把握する作業であるとし、その作業の手順を次のように示している。
(1)鑑定評価の対象となる不動産を的確に認識する
(2)必要とする関連資料を十分に収集・整理する
(3)不動産の価格を形成する要因及び不動産の価格に関する諸原則について十分に理解する
(4)鑑定評価の手法を駆使する
(5)収集・整理した関連諸資料を具体的に分析し、対象不動産に及ぼす自然的、社会的、経済的及び行政的な要因の影響を判断する
(6)対象不動産の経済価値に関する最終判断に到達し、これを貨幣額をもって表示する
また各論では、価格、賃料、証券化対照不動産の価格に分けて、それぞれの評価手法を示している。
不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)に基づき、不動産鑑定士が不動産の経済価値を判定することをいう。
不動産の経済価値を判定する方法としては、金融機関による担保評価や、不動産会社による簡易査定などがあるが、不動産鑑定は公式かつ最も信頼性の高い方法であるといえる。
地価公示における標準地の評価や、都道府県地価調査における基準地の評価は、不動産鑑定によって行なわれる。
また民事裁判において、相続された不動産の評価や、金融機関が担保とする不動産の評価が問題になるケースでは、不動産鑑定士または不動産鑑定士補に依頼し、不動産鑑定を行なうのが一般的である。
不動産を流動化するための典型的な手法であり、不動産から価値を切り離したうえで、その価値を細分化し、証券の形で流通させることをいう。
その仕組みは、大まかには3つの段階によって構成される。
1.流動化の対象となる不動産をSPC等や信託受託者が譲渡を受ける。これによって元の資産保有者(オリジネーター)から不動産が切り離され、不動産そのものの価値(収益力・リスク等)が明確になる。
2.SPC等や信託受託者は、不動産から得られるであろう収益(インカムゲインとキャピタルゲイン)を裏づけとして証券(出資口・信託受益権等)を発行する。これによって、不動産の価値が細分化される。
3.証券を流通させる。
これによって、不動産が金融商品の形で取引されることになる。
このとき、それぞれの段階で仕組みを工夫し、元の不動産の価値を加工して、多様な不動産証券化商品を作り出すことができる。例えば、1.の段階では、異なる複数の不動産をプールしてリスクを分散すること、2.の段階では、収益の配分を優先・劣後の関係に構造化してリスクとリターンの異なる証券を発行することなどが行なわれている。また、3.の段階では、金融市場における不動産証券化商品の特性を明確にして、投資家による適正な判断を可能とするサービスなどが提供されている。さらに通常は、収益性を確保するために、不動産の運用は専門の運用者に委託される。
不動産の証券化において鍵となるのは、不動産からの収益を最適化するような不動産経営能力、および、不動産市場の動向を的確に把握するための市場情報である。しかしながら、その向上・充実を図るための仕組みは、現在、発展途上にある。