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最終更新日:2019/9/18

転抵当

てんていとう

抵当権者がその抵当権を他の債権の担保に供すること。この場合に、担保の対象となる他の債権を有する者が転抵当権者である。

転抵当は、保有する抵当権を処分する方法の一つで、抵当権者と転抵当権者の合意によって成立し、抵当権の付記登記を対抗要件とする。ただし、元の抵当権の債務者に通知し又はその承諾がなければ、当該債務者、その保証人等に対抗できない。抵当権者は、転抵当することによって債権を事前に回収するのと同様の効果を得ることができる。

転抵当権者は、元の抵当権に実行の要件が備わったときには、その抵当権を実行し、当該抵当権の被担保債権の限度において優先弁済を受けることができる。

-- 本文のリンク用語の解説 --

抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度

抵当権設定登記以後に設定された賃借権について、抵当権者の同意のもとに、賃借権が抵当権に対抗できるものとする制度のこと。
この制度は、改正後の民法387条に規定されており、2004(平成16)年4月1日よりスタートした。

1.制度の趣旨
ある不動産に抵当権が設定された場合、抵当権設定登記がなされた後に設定された賃貸借は本来ならばすべて抵当権に劣後するのが原則である。
従って本来は、融資返済不能などの事情によって抵当権が実行された(すなわち抵当不動産が競売された)場合には、抵当不動産の賃借権者はその賃借権を抵当権者に主張することができないはずであり、抵当不動産の競落後には賃借権者は当該不動産を直ちに明け渡さなければならないのが原則である。
こうした競売に伴う賃借人の不利益を緩和するための措置として、建物賃貸借に関しては、6ヵ月間の建物明渡猶予制度が置かれているが、やはり猶予期間経過後には必ず立ち退かなければならないという不都合がある。
そこで、一定の条件を満たした賃借人については、競売にかかわらず立退きをしなくてよいとする本制度が創設されたものである。

2.制度の内容
次の条件をすべて満たした賃借権については、賃借人は常に抵当権者に対抗できる(つまり、競売がなされても従前のとおり賃貸借を継続できる)とするものである。
1)その賃借権が正式に登記されていること
2)抵当権者全員の同意があること(ただし当該賃借権に劣後する抵当権者の同意は不要)
3)上記2)の同意が登記されたこと

3.制度における敷金の継承
この制度により、上記1)・2)・3)の条件をすべて満たした賃借人は、競売にかかわらず従前のとおり賃貸借を継続することができる。そのため、競売における買受人は、従前の賃貸人(=すなわち旧不動産所有者)の賃貸借に関する義務をそのまま継承することとなる。
従ってこの制度の適用下では、賃借人は競売後において将来的に自発的に退去しようとする際には、敷金の返還を買受人に対して主張することが可能となる。
こうした事態が予想されるので、上記ア)の賃借権の登記においては、敷金が登記すべき事項に加えられており、買受人の便宜を図っている(改正後の不動産登記法第81条第4項)。

抵当権者

ある人(A)が他の人(B)に対して債権を有している場合に、Aが債権を保全する目的のために、Bの所有する財産に対してAが抵当権を設定したとき、Aのことを「抵当権者」という。 また、Bは「抵当権設定者」と呼ばれる。

Aが債権を保全する目的のために、第三者(C)の財産に対してAが抵当権を設定することがあるが、このときもAは「抵当権者」と呼ばれる。また、このとき第三者Cは「物上保証人」と呼ばれる。

抵当権

債権を保全するために、債務者(または物上保証人)が、その所有する不動産に設定する担保権のこと。債務者(または物上保証人)がその不動産の使用収益を継続できる点が不動産質と異なっている。 債権が弁済されない場合には、債権者は抵当権に基づいて、担保である不動産を競売に付して、その競売の代金を自己の債権の弁済にあてることができる。

債権

私法上の概念で、ある人(債権者)が、別のある人(債務者)に対して一定の給付を請求し、それを受領・保持することができる権利をいう。

財産権の一つであり、物権とともにその主要部分を構成する。

対抗要件

私法上の概念で、当事者間で効力のある法律関係が、第三者に対して効力を有するための要件をいう。 これに対して、当事者間で効力を有するための条件は「成立要件」といわれる。

対抗要件は、権利によって異なる。例えば、動産に関する物権譲渡の対抗要件は「引渡し」であるが、不動産に関する物権譲渡の対抗要件は「登記」である。あるいは、不動産の賃貸借権の対抗要件をみれば、原則は賃貸借契約後にその物権を取得した者に対して「登記」とされるが、借地権の場合は「借地権者が土地の上に登記された建物を所有すること」、建物の賃貸借権の場合に、その後建物の物権を取得した者に対して「建物の引渡し」という特例がある(借地借家契約については、権利の登記がなくても第三者に対抗できるということである)。

また、「債権譲渡」の際の対抗要件については、その解説を参照。

物上保証人

ある人(A)が他の人(B)に対して債権を有している場合に、Aが債権を保全する手段の一つとして、「第三者(C)の財産に対してAが抵当権を付ける」ことがある。
これは第三者Cが、Cの財産をBのために差し出すということであり、このような方法による債権の担保を「物上保証」という。また、このときのCを「物上保証人」という。

保証人

債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う者をいう。保証人は、法的な行為能力があり、かつ、弁済する資力がなければならない。

債権の回収を確実にするための方法は、財産への請求権を確保する方法(物的担保)と、債務者以外の人への請求権を確保する方法(人的担保)があり、保証人は人的担保のしくみである。

保証人の責任は、保証人が債権者と書面で保証契約を結ぶことによって効力が生じる。保証契約によって負担する債務が「保証債務」である。

保証する債務は、特約のない限り、主たる債務(債務者が元々負っていた債務)のほか、利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含するとされている。例えば、借家人の保証人は、借家人が滞納した家賃だけでなく、明渡しに際しての原状回復などについても責任を負うことになる。

人的担保は、保証人に予期しない負担を負わせ、大きな被害を与える可能性がある。そこで、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって、保証人の保護を強化するべく、次の規定が定められた。
1)個人の保証人については、保証契約時に債務額が確定しない保証(信用保証、身元保証、賃貸借上げ保証など)の場合にはその限度額を定めなければならず、その額を限度に履行責任を負うこと(限度額を定めなければ保証契約は無効となる)
2)事業用の融資に係る経営者以外の保証人については、公証人による意思確認手続が必要であること
3)保証人に対し、主たる債務者の財産等の状況(事業用の融資に係る場合)、主たる債務の履行状況及び期限の利益の喪失に関する情報を提供すべきこと