最終更新日:2024/8/7
賃貸住宅管理業法
ちんたいじゅうたくかんりぎょうほう賃貸住宅を管理する業務を適正に実施するための措置を定めた法律。正式な名称は「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」で、2020年6月に制定された。
賃貸住宅管理業法が定める主な措置は次のとおりである。
(1)賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設
・委託を受けて賃貸住宅の管理業務を行う事業を営もうとする者について、 国土交通大臣の登録を義務付ける。(ただし、管理戸数が一定規模未満の者は義務ではなく任意登録。なお、管理業務とは、賃貸住宅の維持保全及びこれと併せて行う家賃、敷金、共益費等の管理である。)
・賃貸住宅管理業者の業務について、次のことを義務付ける。
a)事務所毎に、業務管理者(賃貸住宅の管理に関する知識・経験等を有する一定の資格者)を選任し配置すること
b)管理受託契約の締結前に、具体的な管理業務の内容・実施方法等(重要事項)について書面を交付して説明すること
c)管理する家賃等について、自己の固有の財産等と分別して管理すること
d)業務の実施状況等について、管理受託契約の相手方に対して定期的に報告すること
e)名義貸しの禁止、知り得た秘密を守ること、標識の掲示など
(2)サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置
・サブリース業者及び勧誘者が特定賃貸借契約(住宅を転貸するための賃貸借契約/マスターリース契約ともいう)を勧誘する場合に、契約の相手方に誇大に広告する行為及び家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げずまたは不実を告げる行為を禁止する。
・特定賃貸借契約の締結前に、家賃、契約期間等(重要事項)を記載した書面を交付して説明することを義務付ける。
なお、法律は、(1)に関しては21年6月から、(2)に関しては20年12月から施行された。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
敷金
1.賃料の不払い・未払いに対する担保
2.契約により借主が負担すべき修繕費用や原状回復費用の前払い
将来契約が終了した場合には、上記1や2の金額を控除した残額が、借主に対して退去後に返還される。なお、関西等では「敷引」の慣行がある。
共益費
なお、法律上の用語としても「共益費」が使われるが、これは同一の債務者に対する各債権者に共通の利益のために要した費用のことである。
例えば、ある債権者が債務者の財産を保存すればそれは他の債権者に利益にもなるので、そのための費用は共益費として、他の債務者に優先して弁済を受けることができるとされる。建物の賃借人が負担する共益費は、これとはまったく別のものであるから、注意を要する。
業務管理者(賃貸住宅管理業の〜)
管理受託契約
名義貸しの禁止
1.名義貸しによる営業の禁止
名義を貸して他人に営業させることは、宅地建物取引業法の免許制度の根本をゆるがす重大な違反行為である。
そのため、名義を貸した側には「名義貸しの禁止」の規定が適用され(法第13条第1項)、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または両者の併科)という重い罰則が予定されている(法第79条第3号)。
2.名義貸しによる表示行為・広告行為の禁止
名義貸しによる営業については上記1)の罰則が適用されるが、実際に営業を行なわない場合(または営業が事後的に立証できない場合)であっても、看板における名義の使用(表示行為)や広告における名義の使用(広告行為)という事実があれば、そうした名義貸しによる表示行為・広告行為があったこと自体が宅地建物取引業法上の処罰対象になる。
具体的には、名義を貸して表示行為・広告行為を行なわせた側には、「名義貸しの禁止」の規定が適用され(法第13条第2項)、100万円以下の罰金が予定されている(法第82条第2号)。
ちなみに、名義を借りた側に対する処罰については下記のとおり。
名義を借りて営業を行なった者が「無免許営業等の禁止」(法第12条第1項)に該当する場合には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金(または両者の併科)という重い罰則が適用される(法第79条第2号)。
また、名義を借りて表示行為・広告行為を行なった者が「無免許営業等の禁止」(法第12条第2項)に該当する場合には、30万円以下の罰金が予定されている(法第82条第2号)。
サブリース
特定賃貸借契約
転貸借
転貸借されてもAB間の賃貸借関係は残る。CはAとの契約関係はないが、Aに対して直接に賃料の支払い等の義務を負う。転貸借には、Aの承諾が必要で、これに反して転貸借がなされた場合には、AはAB間の契約を解除できるし、Cに対して目的物の引渡しを請求できる。
ただし、目的物が宅地建物である場合には、転貸借に関して特別の取扱いがされている。つまり、 1.承諾がない場合であっても当事者間の信頼関係が壊されない限りAの契約解除を許さない(判例による) 2.借地の転貸借について、裁判所がAの承諾に代わって許可を与えることができる 3.Aが承諾しない場合、Bに対して建物買取請求権、造作買取請求権を与える という特例である。
なお、賃借権を第三者に譲渡する場合も、転貸借と同様に目的物の所有者の承諾が必要で、宅地建物についての承諾に関して特例があるのも同じである。