都市計画マスタープラン
としけいかくますたーぷらん
都市計画に関する基本的な方針。都市計画法に基づき決定され、「都市計画区域マスタープラン」と「市町村マスタープラン」との二つの種類がある。
都市計画区域マスタープランは、都道府県知事が「都市計画区域の整備、開発、保全の方針」として決定するもので、都市計画の目標、市街化区域と市街化調整区域の区分の決定の有無および区域区分を定めるときにはその方針、土地利用、都市施設の整備および市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針が定められている。
市町村マスタープランは、市町村長が「市町村の都市計画に関する基本的な方針」として決定するもので、市町村のまちづくりの基本方針、地区ごとの整備・開発・保全に関する目標、課題および方針、土地利用、公共施設の整備および市街地開発事業に関する都市計画の方針等が定められている。
それぞれのマスタープランは、まちづくりの方針を示すとともに、都市計画の総合性や一体性を確保し、市民が都市の将来像を共有するための役割を担っている。
都市計画
土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画であって、都市計画の決定手続により定められた計画のこと(都市計画法第4条第1号)。
具体的には都市計画とは次の1.から11.のことである。
1.都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画法第6条の2)
2.都市再開発方針等(同法第7条の2)
3.区域区分(同法第7条)
4.地域地区(同法第8条)
5.促進区域(同法第10条の2)
6.遊休土地転換利用促進地区(同法第10条の3)
7.被災市街地復興推進地域(同法第10条の4)
8.都市施設(同法第11条)
9.市街地開発事業(同法第12条)
10.市街地開発事業等予定区域(同法第12条の2)
11.地区計画等(同法第12条の4)
注:
・上記1.から11.の都市計画は、都市計画区域で定めることとされている。ただし上記8.の都市施設については特に必要がある場合には、都市計画区域の外で定めることができる(同法第11条第1項)。
・上記4.の地域地区は「用途地域」「特別用途地区」「高度地区」「高度利用地区」「特定街区」「防火地域」「準防火地域」「美観地区」「風致地区」「特定用途制限地域」「高層住居誘導地区」などの多様な地域・地区・街区の総称である。
・上記1.から11.の都市計画は都道府県または市町村が定める(詳しくは都市計画の決定主体へ)。
都市計画法
都市計画に関する制度を定めた法律で、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として、1968(昭和43)年に制定された。
この法律は、1919(大正8)年に制定された旧都市計画法を受け継ぐもので、都市を計画的に整備するための基本的な仕組みを規定している。
主な規定として、都市計画の内容と決定方法、都市計画による規制(都市計画制限)、都市計画による都市整備事業の実施(都市計画事業)などに関する事項が定められている。
都市計画区域
原則として市または町村の中心部を含み、一体的に整備・開発・保全する必要がある区域。
原則として都道府県が指定する。
1.都市計画区域の指定の要件
都市計画区域は次の2種類のケースにおいて指定される(都市計画法第5条第1項、第2項)。
1)市または一定要件を満たす町村の中心市街地を含み、自然条件、社会的条件等を勘案して一体の都市として総合的に整備開発保全する必要がある場合
2)新たに住居都市、工業都市その他都市として開発保全する必要がある区域
1)は、すでに市町村に中心市街地が形成されている場合に、その市町村の中心市街地を含んで一体的に整備・開発・保全すべき区域を「都市計画区域」として指定するものである(※1)。なお、1)の「一定要件を満たす町村」については都市計画法施行令第2条で「原則として町村の人口が1万人以上」などの要件が定められている。
2)は、新規に住居都市・工業都市などを建設する場合を指している。
(※1)都市計画区域は、必要があるときは市町村の区域を越えて指定することができる(都市計画法第5条第1項後段)。また、都市計画区域は2以上の都府県にまたがって指定することもできる。この場合には、指定権者が国土交通大臣となる(都市計画法第5条第4項)。
2.都市計画区域の指定の方法
原則として都道府県が指定する(詳しくは都市計画区域の指定へ)。
3.都市計画区域の指定の効果
都市計画区域に指定されると、必要に応じて区域区分が行なわれ(※2)、さまざまな都市計画が決定され、都市施設の整備事業や市街地開発事業が施行される。また開発許可制度が施行されるので、自由な土地造成が制限される。
(※2)区域区分とは、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分することである。ただし、区域区分はすべての都市計画区域で行なわれるわけではなく、区域区分がされていない都市計画区域も多数存在する。このような区域区分がされていない都市計画区域は「区域区分が定められていない都市計画区域」と呼ばれる。
4.準都市計画区域について
都市計画区域を指定すべき要件(上記1.の1)または2))を満たしていない土地の区域であっても、将来的に市街化が見込まれる場合には、市町村はその土地の区域を「準都市計画区域」に指定することができる。準都市計画区域では、必要に応じて用途地域などを定めることができ、開発許可制度が施行されるので、無秩序な開発を規制することが可能となる(詳しくは準都市計画区域へ)。
市街化区域
都市計画によって定められた、すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいう。
一定の都市計画区域について、都道府県知事が区域区分を決定することによって定まる。
市街化区域内では、必ず用途地域が指定されている。
市街化調整区域
都市計画によって定められた、市街化を抑制すべき区域をいう。
一定の都市計画区域について、都道府県知事が区域区分を決定することによって定まる。
市街化調整区域内で土地の区画形質の変更をする場合には、原則として許可を要する(開発許可)。そして開発許可に当たっては特別な事情にある場合を除いて住宅のための宅地造成等は許可されないなど、市街化調整区域内での開発・建築行為を抑制する規制が適用される。
都市施設
都市施設とは、道路、公園、上下水道など都市において必要となる公共的な施設のことである。
1.都市施設の種類
都市計画法では、都市施設として、次の11種類の施設を定めている(都市計画法第11条1項)。
1)道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
2)公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
3)水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設または処理施設
4)河川、運河その他の水路
5)学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
6)病院、保育所その他の医療施設または社会福祉施設
7)市場、と畜場または火葬場
8)一団地(50戸以上)の住宅施設
9)一団地の官公庁施設
10)流通業務団地
11)電気通信事業用の施設その他(施行令第5条)
2.都市施設を定める基準
都市施設を都市計画で決定する際には、次の基準が設けられている。
1)市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)では、必ず、道路、公園、下水道を定めなければならない(都市計画法第13条第1項第11号)。
2)住居系の用途地域内では、必ず義務教育施設を定めなければならない(都市計画法第13条第1項第11号)。ちなみに住居系の用途地域とは、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域を指す。
3)都市施設は原則として都市計画区域内で定めるが、特に必要があるときは、都市計画区域の外で定めることもできる(都市計画法第11条第1項)。
3.都市施設を定める主体
都市施設を都市計画として決定する主体は、原則として「市町村」である。ただし、広域的見地から決定すべき都市施設、根幹的都市施設については「都道府県」が決定主体となる。
具体的には、国道、都道府県道、4車線以上の道路、流域下水道、産業廃棄物処理施設等は「都道府県」が決定する(都市計画法第15条第1項第5号、同施行令第9条第2項)。
4.建築の制限
都市計画として決定された都市施設(これを「都市計画施設」という)の区域では、都市施設を実際に整備する事業が進行するので、その整備の事業の妨げになるような建物の建築は厳しく制限される(詳しくは都市計画施設の区域内の制限へ)。
5.施行予定者を定めるとき
「一団地の住宅施設(ただし面積が20ha以上のものに限る)」、「一団地の官公庁施設」、「流通業務団地」については、都市施設に関する都市計画で「施行予定者」を定めることが可能である(都市計画法第11条第5項)。
都市施設に「施行予定者」を定めた場合には、原則として2年以内に都市計画事業の認可を申請しなければならない(都市計画法第60条の2)。
また、いったん施行予定者を定めた以上は、施行予定者を定めないものへと計画を変更することは許されない(都市計画法第11条第6項)。
マスタープラン
他の計画の上位に位置付けられる総合的な計画のこと。英語のmaster plan。
都市計画法では「都市計画区域の整備、開発、保全の方針」及び「市町村の都市計画に関する基本的な方針」の二つを指している。両方をあわせて「都市計画マスタープラン」という。
詳しくは、「全体計画」を参照。