火事の延焼を防ぐために建物に設置される耐火構造の壁。
建築基準法に基づき一定規模を超える木造建築物について設置が義務づけられている。設置しなければならない防火壁は、耐火構造であって、自立でき、建物の外壁面・屋根面から突出していなければならないとされている。
防火壁の設置は、建物を垂直面で区画して延焼を防ぐ方法であるが、そのほかに、防火床を設置して水平面で区画し内部延焼を防止する方法も認められている。
建物の外壁や軒裏について、建物の周囲で火災が発生した場合に、外壁や軒裏が延焼を抑制するために一定の防火性能を持つような構造のことである(建築基準法第2条8号)。
このため、防火構造は一般に「外壁・軒裏防火構造」と呼ばれることも多い。
よく似た言葉として「耐火構造」「準耐火構造」があるが、「耐火構造」「準耐火構造」は建物内部で火災が起きた際にも、当該建物自体の倒壊や周囲への延焼を防ぐような構造を指している。
これに対して、防火構造は、建物の周囲で火災が起きたときに、当該建物が火災に巻き込まれないために必要とされる外壁や軒裏の構造のことである。
具体的には、防火構造の詳しい内容は告示(平成12年建設省告示1359号)で規定されている。例えば木造建築物の場合には、その外壁において屋外側を鉄網モルタル塗り、屋内側を石膏ボード張りとすることにより、防火構造とすることができる。
建築物を防火構造としなければならないのは次のようなケースである。
1.防火地域の一定の付属建築物
防火地域で、平屋建ての付属建築物(延べ面積が50平方メートル以下のものに限る)を建てる場合は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。しかしこの場合には、当該建築物は防火構造とする必要がある(建築基準法第61条)。
2.準防火地域の地上1階または地上2階の建築物
準防火地域では、地上1階または地上2階の建築物(延べ面積が500平方メートル以下のものに限る)は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。
しかし、そうした場合でも、その地上1階または地上2階の建築物が木造等である場合には、外壁・軒裏を防火構造としなければならない(建築基準法第61条)。
3.準防火地域の3階建て建築物
準防火地域では、3階建ての建築物(延べ面積が500平方メートル以下のものに限る)は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。
しかし、そうした場合には「3階建て建築物の技術的基準」に適合する必要があるとされている(建築基準法施行令第136条の2)。
この「3階建て建築物の技術的基準」では、3階建て建築物の外壁と軒裏は必ず防火構造としなければならないとされている。