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最終更新日:2021/5/6

防火設備

ぼうかせつび

火災の延焼、拡大を防止するため建物に設置される設備。耐火・遮炎性能を備えていなければならない。

建築基準で定められている防火設備には、次の2種類がある。

・特定防火設備:防火区画・防火壁・外壁の開口部、避難階段の出入口部分などに設置し、1時間以上の耐火・遮炎性能がある防火戸、防火シャッターなど
・防火設備:外壁・防火区画の開口部に設置し、20分以上の耐火・遮炎性能がある網入りガラス、そで壁など

建築基準では、防火地域および準防火地域内の建築物について、その外壁開口部で延焼のおそれのある部分に、防火設備を設置しなければならないとしている。

なお、広い意味では、防火戸、防火シャッター等のほか、火災報知設備や消火設備を含めて「防火設備」ということもある。

-- 本文のリンク用語の解説 --

火災

火によって生じる災害。「火事」も同じ意味である。 火災統計(消防庁)では、火災を、人の意図に反して発生・拡大し(放火による発生を含む)、消火の必要がある燃焼現象であって、消火するために消火施設等を必要とするもの(人の意図に反して発生・拡大した爆発現象を含む)と定義している。 燃焼のためには、発火だけでなく、可燃物と酸素の供給が必要で、可燃物又は酸素が無ければ燃焼は継続しない。したがって、火災を防ぐためには、意図しない発火を防止し、可燃物を適切に管理する必要がある。また、火災が発生したときには、早期に発見し、可燃物の隔離、酸素供給の遮断、放水による冷却などによって燃焼反応を抑えることになる。さらには、家屋火災を防ぐためには、建物を防火・耐火構造にすることが重要である。 火災対策のための設備として、自動火災警報器のような火災を発見・通報する設備、水や消火剤を放出し燃焼を抑える消火設備、炎や煙が拡散するのを防ぐ防火扉や排煙設備などがある。避難のための非常口の設置も有効である。また、火災による損失を補填する火災保険は、火災リスクを管理する仕組みである。 なお、失火によって他者に損害を与えた場合は、「失火ノ責任ニ関スル法律」によって、損害賠償の責任を負わないとされている。ただし、失火者に重大な過失があったときにはこの限りではない。        

建物

民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。 具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。

防火壁

火事の延焼を防ぐために建物に設置される耐火構造の壁。

建築基準法に基づき一定規模を超える木造建築物について設置が義務づけられている。設置しなければならない防火壁は、耐火構造であって、自立でき、建物の外壁面・屋根面から突出していなければならないとされている。

防火壁の設置は、建物を垂直面で区画して延焼を防ぐ方法であるが、そのほかに、防火床を設置して水平面で区画し内部延焼を防止する方法も認められている。

防火地域

防火地域は、都市計画で指定される地域であり、火災を防止するため特に厳しい建築制限が行なわれる地域である(建築基準法第61条)。

防火地域での建築規制は次の通りである。 1.すべての建築物は少なくとも「準耐火建築物」としなければならない。 2.次の1)または2)の建築物は必ず「耐火建築物」としなければならない。
1)階数が3以上の建築物
2)延べ面積が100平方メートルを超える建築物
ここで「階数が3以上」とは、地下の階数も含む。従って、防火地域内の地上2階地下1階の建物は耐火建築物とする必要がある。
延べ面積が100平方メートルちょうどであれば、上記2.には該当しないことにも注意したい。

なお、建築基準法第61条では、防火地域であっても次の建築物は「準耐火建築物」としなくてもよいという緩和措置を設けている。 ア.平屋建ての付属建築物で、延べ面積が50平方メートル以下のもの。
イ.門、塀
ただし上記ア.に関しては、外壁・軒裏を防火構造とし、屋根を不燃材料でふき、開口部に防火設備を設けることが必要とされている。

準防火地域

準防火地域は都市計画で指定される地域であり、火災を防止するために比較的厳しい建築制限が行なわれる地域である(建築基準法61条)。 準防火地域では、建築物は次のようなものとしなければならない。 1.地上4階以上の建築物
→必ず耐火建築物とする

2.地上3階の建築物
→延べ面積によって次の3通りに分かれる。
1)延べ面積が1,500平方メートルを超えるとき: 必ず耐火建築物とする
2)延べ面積が500平方メートルを超え、1,500平方メートル以下のとき: 少なくとも準耐火建築物とする
3)延べ面積が500平方メートル以下のとき: 少なくとも3階建て建築物の技術的基準に適合する建築物とする

3.地上1階または地上2階の建築物
→延べ面積によって次の3通りに分かれる。
1)延べ面積が1,500平方メートルを超えるとき: 必ず耐火建築物とする
2)延べ面積が500平方メートルを超え、1,500平方メートル以下のとき: 少なくとも準耐火建築物とする
3)延べ面積が500平方メートル以下のとき: 通常の建築物でも構わない ポイントを2つ挙げておく。
まず、最近多い地上3階建ての一般住宅は、上記2.の3)に該当するので、少なくとも「3階建て建築物の技術的基準」に適合する必要がある。
次に、通常の地上2階建ての一般住宅は、上記3.の3)に該当するので、原則的に特別な防火措置を講じなくてよい。ただし上記3.の3)の場合に、その建築物を木造とするためには、外壁・軒裏を「防火構造」とする必要がある。

なお、準防火地域では上記の規制のほかに、次の規制があることに留意したい。 ア.屋根の不燃化
建築物が耐火構造や準耐火構造でない場合には、その屋根は不燃材料で造り、または不燃材料でふくことが必要である。
イ.延焼の恐れのある開口部の防火措置
建築物が耐火構造や準耐火構造でない場合には、外壁の開口部(すなわち玄関や窓)で延焼を招く可能性のある部分に、防火戸など防火設備を設けなくてはならない。  
-- 関連用語 --
防火シャッター

火災の侵入を防ぎ、延焼を防止するために建物に設置されるシャッター。高い耐火性能を備えていなければならない。 防火区画(耐火壁で囲われた区画)の開口部、階段等の吹き抜け部分の周囲、外壁の開口部などに設置され、火災時には閉まって耐火壁となる。 なお、一定の建物の防火シャッターについては、定期的な点検が義務付けられている。

防火壁

火事の延焼を防ぐために建物に設置される耐火構造の壁。

建築基準法に基づき一定規模を超える木造建築物について設置が義務づけられている。設置しなければならない防火壁は、耐火構造であって、自立でき、建物の外壁面・屋根面から突出していなければならないとされている。

防火壁の設置は、建物を垂直面で区画して延焼を防ぐ方法であるが、そのほかに、防火床を設置して水平面で区画し内部延焼を防止する方法も認められている。

防火構造

建物の外壁や軒裏について、建物の周囲で火災が発生した場合に、外壁や軒裏が延焼を抑制するために一定の防火性能を持つような構造のことである(建築基準法第2条8号)。
このため、防火構造は一般に「外壁・軒裏防火構造」と呼ばれることも多い。

よく似た言葉として「耐火構造」「準耐火構造」があるが、「耐火構造」「準耐火構造」は建物内部で火災が起きた際にも、当該建物自体の倒壊や周囲への延焼を防ぐような構造を指している。
これに対して、防火構造は、建物の周囲で火災が起きたときに、当該建物が火災に巻き込まれないために必要とされる外壁や軒裏の構造のことである。

具体的には、防火構造の詳しい内容は告示(平成12年建設省告示1359号)で規定されている。例えば木造建築物の場合には、その外壁において屋外側を鉄網モルタル塗り、屋内側を石膏ボード張りとすることにより、防火構造とすることができる。

建築物を防火構造としなければならないのは次のようなケースである。 1.防火地域の一定の付属建築物
防火地域で、平屋建ての付属建築物(延べ面積が50平方メートル以下のものに限る)を建てる場合は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。しかしこの場合には、当該建築物は防火構造とする必要がある(建築基準法第61条)。 2.準防火地域の地上1階または地上2階の建築物
準防火地域では、地上1階または地上2階の建築物(延べ面積が500平方メートル以下のものに限る)は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。
しかし、そうした場合でも、その地上1階または地上2階の建築物が木造等である場合には、外壁・軒裏を防火構造としなければならない(建築基準法第61条)。 3.準防火地域の3階建て建築物
準防火地域では、3階建ての建築物(延べ面積が500平方メートル以下のものに限る)は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。
しかし、そうした場合には「3階建て建築物の技術的基準」に適合する必要があるとされている(建築基準法施行令第136条の2)。
この「3階建て建築物の技術的基準」では、3階建て建築物の外壁と軒裏は必ず防火構造としなければならないとされている。