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最終更新日:2017/12/8

事務所(宅地建物取引業法における〜)

じむしょ(たくちたてものとりひきぎょうほうにおける〜)

宅地建物取引業法第3条第1項で規定する場所のこと(法第3条第1項、施行令第1条の2)。
具体的には、次の2種類の場所が「事務所」に該当する(以下の文章は国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方にもとづいている)。

1.本店または支店(施行令第1条の2第1号)
商業登記簿等に記載されており、継続的に宅地建物取引業の営業の拠点となる実体を備えているものを指す。
ただし、宅地建物取引業を営まない支店は「事務所」から除外される。
また本店は、支店の業務を統括する立場にあるため、本店が宅地建物取引業を直接営んでいない場合であっても、その本店は「事務所」に該当するものとされる。

2.上記1.以外で「継続的に業務を行なうことができる施設」を有する場所で、宅地建物取引業に係る「契約を締結する権限を有する使用人」を置く場所(施行令第1条の2第2号)。

「継続的に業務を行なうことができる施設」とは、固定的な施設であり、テント張りの施設や仮設小屋は含まれない。

「契約を締結する権限を有する使用人」とは、宅地建物取引士を指すものではなく、支店長・支配人などのように営業に関して一定範囲の代理権を持つ者を指している(ただし、支店長等が同時に宅地建物取引士である場合がある)。
また、「置く」とは常勤の使用人を置くという意味である。 

以上の1.と2.の場所を合わせて、宅地建物取引業法では「事務所」と呼んでいる。
従って、会社の登記(商業登記簿)では支店として登記されていなくても、継続的に業務を行なうことができる施設に、宅地建物取引業に係る支店長や支配人を置いていれば、その施設は「事務所」とみなされることになる。

なお、宅地建物取引業法ではよく似た概念として「事務所等」「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」「標識を掲示すべき場所」「クーリングオフが適用されない場所」を定めているので、それぞれの違いに注意したい。

-- 本文のリンク用語の解説 --

宅地建物取引業法

宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。

この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。

宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

宅地建物取引業法の解釈・運用に関して、国が定めた包括的なガイドラインのこと。

従来、宅地建物取引業法の解釈・運用については、国(旧建設省)が通達・行政実例により詳細かつ統一的な基準を定めてきたが、2000(平成12)年4月1日付けで「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(平成11年法律第87号)が施行されたことにより、宅地建物取引業に係る事務は都道府県の自治事務等となった。
このため、2000(平成12)年4月1日をもって従来旧建設省から各都道府県に発出された宅地建物取引業法に関する通達等は一律廃止された。

しかし、これでは宅地建物取引業法の解釈・運用が国民から見て極めてわかりにくくなると考えられたので、2000(平成12)年7月25日付で建設省不動産業課(現・国土交通省不動産・建設経済局不動産業課)において「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を策定し、各都道府県に参考通知したものである。
なお、宅地建物取引業法等に改正があったときは、この「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」もその都度改正され、各都道府県に参考通知されている。

宅地建物取引業

宅地建物取引業とは「宅地建物の取引」を「業として行なう」ことである(法第2条第2号)。
ここで「宅地建物の取引」と「業として行なう」とは具体的には次の意味である。

1.「宅地建物の取引」とは次の1)および2)を指している。
1)宅地建物の売買・交換
2)宅地建物の売買・交換・貸借の媒介・代理

上記1.の1)では「宅地建物の貸借」が除外されている。このため、自ら貸主として賃貸ビル・賃貸マンション・アパート・土地・駐車場を不特定多数の者に反復継続的に貸す行為は、宅地建物取引業から除外されているので、宅地建物取引業の免許を取得する必要がない。
またここでいう「宅地」とは、宅地建物取引業法上の宅地を指す(詳しくは「宅地(宅地建物取引業法における〜)」を参照のこと)。

2.「業として行なう」とは、宅地建物の取引を「社会通念上事業の遂行と見ることができる程度に行なう状態」を指す。具体的な判断基準は宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方の「第2条第2号関係」に記載されているが、主な考え方は次のとおりである。
1)取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行なおうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
2)取引の反復継続性
反復継続的に取引を行なおうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行なおうとするものは事業性が低い。

宅地建物取引士

宅地建物取引士資格試験に合格し、都道府県知事の登録を受けて、宅地建物取引士証の交付を受けた者のこと。

一定以上の知識・経験を持つ者として公的に認められた者である。宅地建物取引業者は、事務所ごとに従事者5名に対して1名以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければならない(詳しくは宅地建物取引士の設置義務へ)。

宅地建物取引において特に重要な次の3つの業務は、宅地建物取引士だけが行なうことができるとされている(宅地建物取引士ではない者はこれらの業務を行なうことができない)。 1.重要事項説明
2.重要事項説明書への記名・押印
3.37条書面への記名・押印

宅地建物取引士となるためには、具体的には次の1)から5)の条件を満たす必要がある。 1)宅地建物取引士資格試験に合格すること
宅地建物取引業に関して必要な知識に関する資格試験である宅地建物取引士資格試験に合格することが必要である。なお、一定の要件を満たす者については宅地建物取引士資格試験の一部免除の制度がある。
2)都道府県知事に登録を申請すること
この場合、宅地建物取引に関して2年以上の実務経験を有しない者であるときは、「登録実務講習」を受講し修了する必要がある。
3)都道府県知事の登録を受けること
登録を受けるには一定の欠格事由に該当しないことが必要である。
4)宅地建物取引士証の交付を申請すること
宅地建物取引士証の交付を申請する日が宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年を超えている場合には、都道府県知事の定める「法定講習」を受講する義務がある。
5)宅地建物取引士証の交付を受けること
氏名、住所、生年月日、有効期間の満了する日等が記載されている宅地建物取引士証の交付を受けて初めて正式に宅地建物取引士となる(氏名において旧姓が併記された宅地建物取引士証の交付を受けた日以降は、書面への記名等の業務において旧姓を使用してよいこととされている)。 宅地建物取引士は、宅地建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護および円滑な宅地建物の流通に資するよう公正誠実に業務を処理するほか、信用・品位を害するような行為をしないこと、必要な知識・能力の維持向上に努めることとされている。

事務所等(宅地建物取引業法における〜)

宅地建物取引業法では、その第31条の3第1項で、一定の場所には、成年で専任の宅地建物取引士を置かなければならないと定めている。
この専任の宅地建物取引士を置くべき場所のことを、宅地建物取引業法では「事務所等」と表現している。

「事務所等」とは具体的には次の2種類の場所を指す言葉である。

1.「事務所」
原則的には本店・支店を「事務所」と呼ぶ。ただし、本店・支店以外であっても、継続的に業務を行なうことができる施設に宅地建物取引業に係る支店長や支配人を置いていれば、その施設は「事務所」に含まれることになる(宅地建物取引業法施行令第1条の2)。

2.「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」
これは上記1.の事務所以外であって、専任の宅地建物取引士を置かなければならない場所のことである。この場所は宅地建物取引業法施行規則第15条の5の2において具体的に規定されている。
この規則第15条の5の2の内容は複雑なので、概略だけをまとめれば「事務所以外で継続的に業務を行なう施設を有する場所」「10区画以上または10戸以上の一団地の宅地建物を分譲する場合の案内所」「他の宅地建物取引業者が分譲する10区画以上または10戸以上の一団地の宅地建物の代理または媒介をする場合の案内所」「宅地建物取引業者が展示会その他の催しをする場所」という4種類の場所であって、契約の締結または契約の申込みの受付をする場所が、この規則第15条の5の2の場所である。

なお「事務所等」という言葉は、上記のとおり宅地建物取引業法第31条第3項で定義されている。しかし、宅地建物取引業法第37条の2(クーリングオフ)においてもやはり「事務所等」という言葉が使用されている。両者は異なる内容を指しているので注意したい。

事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所

宅地建物取引業法では、法第3条第1項の「事務所」には専任の宅地建物取引士を一定割合以上設置することを義務付けている(詳しくは宅地建物取引士の設置義務)。

しかし、法第3条第1項の「事務所」に該当しない案内所・展示会等であっても、契約締結等を行なう場合には、宅地建物取引業の業務の適正を確保すべき必要性が非常に高いといえる。
そこで宅地建物取引業法では、こうした案内所等が一定の要件に該当する場合には、1名以上の成年の専任の宅地建物取引士を常時設置するように義務付けているのである。

このような「事務所以外の場所であって、専任の宅地建物取引士を置くべき場所」とは、具体的には、施行規則第15条の5の2で規定されている。ただし、この施行規則第15条の5の2の内容は複雑なので、1.外形的な要件と2.実質的な要件に分けてそれぞれ説明する(なお、以下の文章は国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方にもとづいている)。

1.外形的な要件
施行規則第15条の5の2で規定する「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」とは、次の4種類の場所のどれかに該当することが必要である。
1)事務所以外で継続的に業務を行なう施設を有する場所
2)10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物を分譲する場合の案内所
3)他の宅地建物取引業者が分譲する10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物について、代理または媒介をする場合の案内所
4)宅地建物取引業者が展示会その他の催しをする場所

上記の1)は、「事務所」と同等程度に事務所としての物的施設を有してはいるが、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する者(支店長・支配人など)が設置されていないせいで、「事務所」から除外されるような場所を指している。
具体的には、「特定の物件の契約または申込みの受付等を行なう場所」「特定のプロジェクトを実施するための現地の出張所」等が該当する。

2)は、一団地(すなわち10区画以上の一団の宅地または10区画以上の一団の建物)の分譲をするための案内所のことである。これには臨時に開設する案内所も含まれる。例えば、「週末に宅地建物取引士や契約締結権者が出張して申込みの受付や契約の締結を行なう別荘の現地案内所等のように、週末にのみ営業を行なうような場所」も含まれる。

3)は、上記2)の分譲について、販売の代理や媒介を行なう宅地建物取引業者が設置する案内所を指している。

4)は、「宅地建物の取引や媒介契約の申込みを行なう不動産フェア」「宅地建物の買換え・住替えの相談会」「住宅金融公庫融資付物件等のように一時に多数の顧客が対象となる場合に設けられる抽選会」「売買契約の事務処理等を行なう場所」などのように、催しとして期間を限って開催されるフェア・展示会・相談会・抽選会その他を指している。

2.実質的な要件
上述の1.の1)から4)の場所において、契約を締結しまたは契約の申込みを受けるとき、その場所は「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」となる。

ここで、「契約の締結」「契約の申込みを受ける」という言葉の具体的な意味が「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で詳しく規定されているので以下で紹介する。

1)契約の締結
契約とは、「宅地建物の売買・交換の契約(予約を含む)」「宅地建物の売買・交換・貸借の代理・媒介の契約(予約を含む)」を指している。従って、物件の売買契約だけでなく、物件の売買の媒介契約や、物件の賃貸の媒介契約なども含まれている。
このような意味での契約を締結するためには、「契約を締結する権限を有する者が派遣されている」か、または「契約を締結する権限の委任を受けた者が置かれている」ことが必要となる。

2)契約の申込みを受ける
契約の意味は上記1)と同じである。
また「申込み」とは、契約を締結する意思を表示することであるが、手付金・申込証拠金などの金銭を交付して締結の意思表示をする場合だけではなくて、「物件の購入のための抽選の申し込み」のような金銭の授受を伴わない意思表示も含まれるので、注意したい。
なお「申込みを受ける」ためには、「契約を締結する権限を有する者が派遣されていること」または「契約を締結する権限の委任を受けた者が置かれていること」は必須ではない。この点にも注意したい。

クーリングオフ

一定期間、無条件で契約の申込みの撤回または解除ができる制度。消費者を保護するための措置で、訪問販売、電話勧誘販売などに適用されるが、一定の宅地建物の取引もその対象となる。

クーリングオフの適用があるのは、 1.宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地建物売買契約において、2.その事務所やそれに準ずる場所以外の場所で申込みや締結がされた場合であり、3.撤回または解除ができるのは8日間以内 である。

撤回または解除は書面で通知しなければならないが、その理由などを示す必要はなく、発信日を明確にすれば良い。その通知があったときには、売主は速やかに手付金等受領した金銭を返還しなければならない。
-- 関連用語 --
事務所等(宅地建物取引業法における〜)

宅地建物取引業法では、その第31条の3第1項で、一定の場所には、成年で専任の宅地建物取引士を置かなければならないと定めている。
この専任の宅地建物取引士を置くべき場所のことを、宅地建物取引業法では「事務所等」と表現している。

「事務所等」とは具体的には次の2種類の場所を指す言葉である。

1.「事務所」
原則的には本店・支店を「事務所」と呼ぶ。ただし、本店・支店以外であっても、継続的に業務を行なうことができる施設に宅地建物取引業に係る支店長や支配人を置いていれば、その施設は「事務所」に含まれることになる(宅地建物取引業法施行令第1条の2)。

2.「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」
これは上記1.の事務所以外であって、専任の宅地建物取引士を置かなければならない場所のことである。この場所は宅地建物取引業法施行規則第15条の5の2において具体的に規定されている。
この規則第15条の5の2の内容は複雑なので、概略だけをまとめれば「事務所以外で継続的に業務を行なう施設を有する場所」「10区画以上または10戸以上の一団地の宅地建物を分譲する場合の案内所」「他の宅地建物取引業者が分譲する10区画以上または10戸以上の一団地の宅地建物の代理または媒介をする場合の案内所」「宅地建物取引業者が展示会その他の催しをする場所」という4種類の場所であって、契約の締結または契約の申込みの受付をする場所が、この規則第15条の5の2の場所である。

なお「事務所等」という言葉は、上記のとおり宅地建物取引業法第31条第3項で定義されている。しかし、宅地建物取引業法第37条の2(クーリングオフ)においてもやはり「事務所等」という言葉が使用されている。両者は異なる内容を指しているので注意したい。

事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所

宅地建物取引業法では、法第3条第1項の「事務所」には専任の宅地建物取引士を一定割合以上設置することを義務付けている(詳しくは宅地建物取引士の設置義務)。

しかし、法第3条第1項の「事務所」に該当しない案内所・展示会等であっても、契約締結等を行なう場合には、宅地建物取引業の業務の適正を確保すべき必要性が非常に高いといえる。
そこで宅地建物取引業法では、こうした案内所等が一定の要件に該当する場合には、1名以上の成年の専任の宅地建物取引士を常時設置するように義務付けているのである。

このような「事務所以外の場所であって、専任の宅地建物取引士を置くべき場所」とは、具体的には、施行規則第15条の5の2で規定されている。ただし、この施行規則第15条の5の2の内容は複雑なので、1.外形的な要件と2.実質的な要件に分けてそれぞれ説明する(なお、以下の文章は国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方にもとづいている)。

1.外形的な要件
施行規則第15条の5の2で規定する「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」とは、次の4種類の場所のどれかに該当することが必要である。
1)事務所以外で継続的に業務を行なう施設を有する場所
2)10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物を分譲する場合の案内所
3)他の宅地建物取引業者が分譲する10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物について、代理または媒介をする場合の案内所
4)宅地建物取引業者が展示会その他の催しをする場所

上記の1)は、「事務所」と同等程度に事務所としての物的施設を有してはいるが、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する者(支店長・支配人など)が設置されていないせいで、「事務所」から除外されるような場所を指している。
具体的には、「特定の物件の契約または申込みの受付等を行なう場所」「特定のプロジェクトを実施するための現地の出張所」等が該当する。

2)は、一団地(すなわち10区画以上の一団の宅地または10区画以上の一団の建物)の分譲をするための案内所のことである。これには臨時に開設する案内所も含まれる。例えば、「週末に宅地建物取引士や契約締結権者が出張して申込みの受付や契約の締結を行なう別荘の現地案内所等のように、週末にのみ営業を行なうような場所」も含まれる。

3)は、上記2)の分譲について、販売の代理や媒介を行なう宅地建物取引業者が設置する案内所を指している。

4)は、「宅地建物の取引や媒介契約の申込みを行なう不動産フェア」「宅地建物の買換え・住替えの相談会」「住宅金融公庫融資付物件等のように一時に多数の顧客が対象となる場合に設けられる抽選会」「売買契約の事務処理等を行なう場所」などのように、催しとして期間を限って開催されるフェア・展示会・相談会・抽選会その他を指している。

2.実質的な要件
上述の1.の1)から4)の場所において、契約を締結しまたは契約の申込みを受けるとき、その場所は「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」となる。

ここで、「契約の締結」「契約の申込みを受ける」という言葉の具体的な意味が「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で詳しく規定されているので以下で紹介する。

1)契約の締結
契約とは、「宅地建物の売買・交換の契約(予約を含む)」「宅地建物の売買・交換・貸借の代理・媒介の契約(予約を含む)」を指している。従って、物件の売買契約だけでなく、物件の売買の媒介契約や、物件の賃貸の媒介契約なども含まれている。
このような意味での契約を締結するためには、「契約を締結する権限を有する者が派遣されている」か、または「契約を締結する権限の委任を受けた者が置かれている」ことが必要となる。

2)契約の申込みを受ける
契約の意味は上記1)と同じである。
また「申込み」とは、契約を締結する意思を表示することであるが、手付金・申込証拠金などの金銭を交付して締結の意思表示をする場合だけではなくて、「物件の購入のための抽選の申し込み」のような金銭の授受を伴わない意思表示も含まれるので、注意したい。
なお「申込みを受ける」ためには、「契約を締結する権限を有する者が派遣されていること」または「契約を締結する権限の委任を受けた者が置かれていること」は必須ではない。この点にも注意したい。

宅地建物取引士の設置義務

宅地建物取引業者が、その事務所等に、「成年の専任の宅地建物取引士」を置かなければならないという義務のこと。

1.取引士を置くべき場所と人数
最低設置人数は、その場所の種類で異なることとされており、具体的には次のとおり。

1)「事務所」に設置すべき成年の専任の宅地建物取引士の最低設置人数は、事務所の「業務に従事する者」(以下「従事者」という)の数の5分の1以上である。
例えば、事務所における従事者が11人ならば、その5分の1は2.2人であるので、成年の専任の宅地建物取引士を3人(またはそれ以上)置かなければならない。
なお従事者の範囲については、詳細なガイドラインが設けられている(別項目の「従事者」を参照のこと)。
2)「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」に設置すべき成年の専任の宅地建物取引士の最低設置人数は、その場所の従事者の人数に関係なく、1名以上である。

2.置くべき取引士の要件
上述の1.において置くべき宅地建物取引士は「成年」かつ「専任」でなければならないとされている。

ここで「専任」とは、国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方によれば、原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤(宅地建物取引業者の通常の勤務時間を勤務することをいう。ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で、宅地建物取引業者の事務所以外において通常の勤務時間を勤務する場合を含む)して、専ら宅地建物取引業に従事する状態をいうと解説されている。
ただし、当該事務所が宅地建物取引業以外の業種を兼業している場合等で、当該事務所において一時的に宅地建物取引業の業務が行なわれていない間に他の業種に係る業務に従事することは差し支えないものと解説されている。

また、「成年」とは満18歳に達したことをいう(詳しくは別項目の「成年」へ)。

3.置くべき取引士の要件に関する特例措置
役員(個人業者の場合には業者本人)が、宅地建物取引士であるときは、その者が「成年の専任の宅地建物取引士」とみなされるという特例措置が設けられている。


なお、ここでいう「役員」とは、取締役よりも広い範囲を指している。具体的には「役員とは、業務を執行する社員、取締役、執行役、またはこれらに準ずる者」とされている。ちなみに監査役はここでいう「役員」から除外されている。

4.設置義務違反の是正措置
上述の1.の最低設置人数に違反する状態になった場合には、宅地建物取引業者は早急に是正しなければならない。
具体的には、既存の事務所等がこの成年の専任取引士の設置義務に違反する状態となったときは、2週間以内に設置義務を満たす必要があるとされている。

標識の掲示

免許証番号などを記載した「標識」を、宅地建物取引業者の事務所その他の一定の場所に掲示することを「標識の掲示」という。

1.趣旨
無免許営業を防止すること、責任の所在を明確にすること等の目的で、宅地建物取引業者に義務付けられたものである(宅建業法第50条第1項)。

2.標識に記載すべき事項
標識に掲示すべき事項は、免許証番号、免許有効期間、商号、代表者氏名、主たる事務所の所在地など(施行規則第19条第2項)。

3.標識を掲示すべき場所
標識を掲示すべき場所としては、次の1)から3)の3種類の場所が法定されている。
1)事務所(法第3条第1項)
2)事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所(施行規則第15条の5の2)
3)1)および2)以外の場所であって標識を掲示すべき場所(法第50条第1項、施行規則第19条第1項)

4.標識を掲示すべき場所についての説明
上記の1)と2)については、別項目の「事務所」「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」に詳しい説明があるのでそちらを参照のこと。
上記の3)の場所は、施行規則第19条第1項において法定されている。具体的には上記の3)の場所とは、次のa)からe)の場所のことである。
a)継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
b)宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地または建物の所在する場所(ここで「一団」とは「10戸以上または10区画以上」を指す。次のc)とd)でも同じ(施行規則第15条の5の2による))
c)一団の宅地建物の分譲を案内所を設置して行なう場合には、その案内所
d)他の宅地建物取引業者が行なう一団の宅地建物の分譲の代理または媒介を案内所を設置して行なう場合には、その案内所
e)宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合には、これらの催しを実施する場所

5.標識を掲示すべき場所についての説明の補足
上述の3.の2)の場所と3)の場所は、要件が非常によく似ているので区別がつきにくい。
区別するための判断基準は、2)の場所では、契約の締結または契約の申込みを受けるという業務を行なうことが要件になっているのに対して、3)の場所ではそうした契約に関する要件がないという点である。

例えば、ある10区画の宅地の分譲の案内所について、その案内所で契約の締結を行なうかまたは契約の申込みを受けるのであれば、その案内所は2)の場所となり、専任の宅地建物取引士を1名以上設置するとともに、標識を掲示しなければならない。
しかし、その案内所において、契約の締結を行なうことも契約の申込みを受けることもしないのであれば、その案内所は3)の場所となるので、専任の宅地建物取引士を設置する義務はないが、標識は必ず掲示しなければならない、ということである。

また上述の4.の場所のうちb)の場所(すなわち一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地または建物の所在する場所)については、専任の宅地建物取引士を設置する場所になることはあり得ないが、標識は必ず掲示しなければならないことに注意したい。

デジタルサイネージ等のICT機器を活用した掲示についても、公衆が必要なときに確認できるもの、標識を確認することができる旨の表示が常時分かりやすい形でなされていることなど、いくつかの要件を満たす場合には書面での標識の掲示と同等の役割を果たしているものと考えられる。

業務を行なう場所の届出

宅地建物取引業者が、その業務を行なう案内所・展示会等について、業務内容その他を、業務開始の10日前までに、その案内所等を管轄する知事等に事前に届け出ること。

1.趣旨
宅地建物取引業者は、宅地建物の分譲・代理・媒介のために現地案内所を設けたり、展示会・相談会・抽選会を催すなどの方法で、「事務所」以外の場所で契約を締結し、または契約の申込みを受ける場合がある。
このような場合についても公的機関が監督し、業務の適正を確保する必要があるので、そのような案内所等を事前に届け出るよう宅地建物取引業者に対して義務付けたものである。

2.届出の対象となる場所
国土交通省令で定める場所である。これは、具体的には「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」のことを指している。
(詳細は「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」へ)

3.届出をすべき時期
案内所・展示会等で業務を開始する日の10日前までに届け出なければならない。

4.届出の方法
宅地建物取引業者は、所定の様式による届出を、免許を受けた都道府県知事(または免許を受けた国土交通大臣)と、その案内所等が所在する都道府県の都道府県知事の両方に届け出なければならない。

なお、免許を受けた都道府県知事(または免許を受けた国土交通大臣)に対する届出は、案内所等の所在地を管轄する知事を経由することになっている。

5.届出書の内容
届出書の様式は、施行規則様式第12号に規定されている。
届出書の内容は、「対象となる案内所・展示会等の場所」「業務の種別」「業務の態様(契約の締結、契約の申込みの受理)」「取り扱う宅地建物の内容等」「業務を行なう期間」「専任の宅地建物取引士の氏名・登録番号」である。