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最終更新日:2024/5/29

移転工事

いてんこうじ

建築物の移転とは、原則として建築物そのものには手を加えず、解体等せずに場所を移動することを指す。移動する手段として、ジャッキアップ、ころ、レール等を用いた「曳家」がある。

建築基準法上は、第2条(用語の定義)第13号に、新築増築改築とともに掲げられており、建築行為の一種である。防火地域または準防火地域外で、移転に係る床面積が10平方メートル以内であるときは、建築確認申請を要しない(同法第6条第2項)。同一敷地内で移転する場合には、従来から、既存不適格建築物に対する制限の緩和(同法第86条の7)が適用され、確認申請を要しなかったが、既存ストックの有効活用を図った2014(平成26)年の建築基準法改正により、他の敷地へ移転する場合でも、特定行政庁が交通上、安全上、防火上、避難上、衛生上及び市街地の環境保全上支障がないと認める場合には、既存不適格建築物に対する制限の緩和が認められ、改めて確認申請をする必要がなくなった(同法第86条の7第4項、同法施行令第137条の16の新設)。



-- 本文のリンク用語の解説 --

建築物

建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法第2条第1号)。

これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。
1.屋根と柱または壁を有するもの
2.上記に付属する門や塀
3.以上のものに設けられる建築設備

上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。
なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。

曳家

建物をコロなどの上に乗せ、引いて移動すること。建物の位置を変えるために動かす方法の一つで、解体せずに移動させる。 曳家するためには、家屋を土台から浮き上がらせることが必要で、自重が大きな建物は難しい。また、移動できるのは、ほぼ水平な方向に限られる。 曳家に対して、解体し、他の場所に元の形のまま建て直す方法が「移築」である。

建築基準法

国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。

遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。

その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。

新築

建物を新たに建築することをいう。これに対して、従来の建物を建て直すことを「改築」という。両者を併せて「新改築」ということもある。

法令上は、一般的に、新築と改築とで取扱いが異なることはないが、新築の場合は敷地の整備を伴うことが通例であるのに対して、改築の場合は敷地整備を行わないことが多い。 なお、広告で新築と表示できるものは建築後1年未満で未入居の建物とされている。

増築

建物の床面積を増す建築工事。一般に、1棟の建物についてその床面積を追加する工事をいうが、敷地内に別棟の建物を追加する工事も増築ということがある。 なお、建物に追加する工事は「増築」であるが、建物を建て直す工事は「改築」になる。

改築

建築物の全部もしくは一部を除却すると同時に、これと同様の規模・構造の建築物を建てることをいう。

建築基準法では、改築も「建築」の一種とされており(建築基準法第2条第13号)、改築についても建築確認を申請する必要がある(建築基準法第6条)。

防火地域

防火地域は、都市計画で指定される地域であり、火災を防止するため特に厳しい建築制限が行なわれる地域である(建築基準法第61条)。

防火地域での建築規制は次の通りである。 1.すべての建築物は少なくとも「準耐火建築物」としなければならない。 2.次の1)または2)の建築物は必ず「耐火建築物」としなければならない。
1)階数が3以上の建築物
2)延べ面積が100平方メートルを超える建築物
ここで「階数が3以上」とは、地下の階数も含む。従って、防火地域内の地上2階地下1階の建物は耐火建築物とする必要がある。
延べ面積が100平方メートルちょうどであれば、上記2.には該当しないことにも注意したい。

なお、建築基準法第61条では、防火地域であっても次の建築物は「準耐火建築物」としなくてもよいという緩和措置を設けている。 ア.平屋建ての付属建築物で、延べ面積が50平方メートル以下のもの。
イ.門、塀
ただし上記ア.に関しては、外壁・軒裏を防火構造とし、屋根を不燃材料でふき、開口部に防火設備を設けることが必要とされている。

準防火地域

準防火地域は都市計画で指定される地域であり、火災を防止するために比較的厳しい建築制限が行なわれる地域である(建築基準法61条)。 準防火地域では、建築物は次のようなものとしなければならない。 1.地上4階以上の建築物
→必ず耐火建築物とする

2.地上3階の建築物
→延べ面積によって次の3通りに分かれる。
1)延べ面積が1,500平方メートルを超えるとき: 必ず耐火建築物とする
2)延べ面積が500平方メートルを超え、1,500平方メートル以下のとき: 少なくとも準耐火建築物とする
3)延べ面積が500平方メートル以下のとき: 少なくとも3階建て建築物の技術的基準に適合する建築物とする

3.地上1階または地上2階の建築物
→延べ面積によって次の3通りに分かれる。
1)延べ面積が1,500平方メートルを超えるとき: 必ず耐火建築物とする
2)延べ面積が500平方メートルを超え、1,500平方メートル以下のとき: 少なくとも準耐火建築物とする
3)延べ面積が500平方メートル以下のとき: 通常の建築物でも構わない ポイントを2つ挙げておく。
まず、最近多い地上3階建ての一般住宅は、上記2.の3)に該当するので、少なくとも「3階建て建築物の技術的基準」に適合する必要がある。
次に、通常の地上2階建ての一般住宅は、上記3.の3)に該当するので、原則的に特別な防火措置を講じなくてよい。ただし上記3.の3)の場合に、その建築物を木造とするためには、外壁・軒裏を「防火構造」とする必要がある。

なお、準防火地域では上記の規制のほかに、次の規制があることに留意したい。 ア.屋根の不燃化
建築物が耐火構造や準耐火構造でない場合には、その屋根は不燃材料で造り、または不燃材料でふくことが必要である。
イ.延焼の恐れのある開口部の防火措置
建築物が耐火構造や準耐火構造でない場合には、外壁の開口部(すなわち玄関や窓)で延焼を招く可能性のある部分に、防火戸など防火設備を設けなくてはならない。  

床面積

建築物の各階において、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の面積をいう(建築基準法施行令第2条1項3号)。

なお具体的な床面積の判定の方法については、建設省(現国土交通省)が、通達(昭和61年4月30日付建設省住指発第115号)によって詳しい基準を設けている。

既存不適格建築物

事実上建築基準法に違反しているが、特例により違法建築ではないとされている建築物のこと。 建築基準法第3条第2項では、建築基準法および施行令等が施行された時点において、すでに存在していた建築物等や、その時点ですでに工事中であった建築物等については、建築基準法および施行令等の規定に適合しない部分を持っていたとしても、これを違法建築としないという特例を設けている。
この規定により、事実上違法な状態であっても、法律的には違法でない建築物のことを「既存不適格建築物」と呼んでいる。
なお既存不適格建築物は、それを将来建て替えようとする際には、違法な部分を是正する必要がある。 また、建築基準法第10条では、特定行政庁は、既存不適格建築物であっても、それが著しく保安上危険であり、または著しく衛生上有害であると認められる場合には、相当の猶予期限を設けて、所有者等に建築物の除却等を命令することができるとされている。この規定により特定行政庁の権限において、著しく老朽化した既存不適格建築物を撤去すること等が可能となっている。

特定行政庁

建築基準行政において、建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長を、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。

人口が25万人以上の市の市長は原則として特定行政庁であるほか、それ以外の市町村長も建築主事を置くことによって特定行政庁となる。

建築主事は建築確認等の業務を行なうが、違反建築物に対する措置等は特定行政庁の業務とされている。