宅地建物取引士資格試験の一部免除
たくちたてものとりひきししかくしけんのいちぶめんじょ
宅地建物取引士資格試験は、宅地建物取引業法第16条にもとづき、都道府県知事が実施する資格試験である。この試験で、一定の講習(「登録講習」)を受けた者については、試験の一部を免除する制度が設けられている(宅地建物取引業法第16条第3項)。
これを宅地建物取引士資格試験の一部免除と呼んでいる。
一部免除を受けるために必要となる「登録講習」は(公財)不動産流通推進センターをはじめとする複数の登録講習機関が実施している。
「登録講習」を受講するためには、宅地建物取引業に従事していることが要件となっている(2004(平成16)年までの「指定講習」を受講するためには「通算して3年以上の宅地建物取引業務に関する実務経験を有すること」が必要だったが、2005(平成17)年からは宅地建物取引業に従事しているだけで受講できることになった)。
「登録講習」は通信講座およびスクーリングから成り立っている。
スクーリングの最終日に登録講習修了試験が実施され、この試験に合格すると「登録講習修了者証明書」が交付される。この証明書によって、証明書の公布日から3年以内に実施される宅地建物取引士資格試験の一部免除の適用を受けることができる。
なお一部免除を受ける者(即ち証明書の交付を受けた者)については次の要領で試験が実施される。
1.試験時間は1時間50分(通常の受験者より10分短い)
2.5問免除される結果、45問4肢択一の試験問題
3.上記の2.の45問は、通常の受験者と同一の問題である
4.免除される5問の範囲は「宅地及び建物の需給に関する法令および実務に関すること」および「土地の形質、地積、地目および種別並びに建物の形質、構造および種別に関すること」である。過去の出題から分析すれば、具体的には「統計・景品表示・住宅金融公庫・土地・建物」が免除されるという意味である(宅地建物取引業法施行規則第10条の5、同施行規則第8条第1号および第5号)。
5.合格点は通常の受験者と同一である。例えば、その年の通常の受験者の合格点が33点であるときは、指定講習修了者は45問中28問に正解すれば合格することとなる。
宅地建物取引士資格試験
宅地建物取引業法第16条第1項にもとづき、都道府県知事が実施する資格試験。宅地建物取引業に関して必要な知識について行なわれる試験である。
年齢、学歴、宅地建物取引業に関する実務経験などによる受験資格の制限は一切ないので、誰でも受験することができる(ただし試験を受けようとする都道府県内に居住していることが条件となっている場合が多い)。
なお、一定の実務経験を有し、登録講習機関が実施する講習(登録講習)を受けた者については、試験の一部を免除する制度が設けられている(宅地建物取引業法第16条第3項)。
宅地建物取引業法
宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。
この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。
登録講習
宅地建物取引士資格試験では一定の講習を受けた者については、宅地建物取引士資格試験の一部免除の制度(50問中の5問の免除)が設けられている(宅地建物取引業法第16条第3項)。
この宅地建物取引業法第16条第3項に定められた一部免除を受けるために受講しなければならない講習のことを「登録講習」と呼んでいる。
この「登録講習」は(公財)不動産流通近代化センターをはじめとする複数の登録講習機関が実施している。
「登録講習」を受講するためには、宅地建物取引業に従事していることが要件となっている(2004(平成16)年までは「通算して3年以上の宅地建物取引業務に関する実務経験を有すること」が必要だったが、2005(平成17)年からは宅地建物取引業に従事しているだけで受講できることになった)。
「登録講習」は、通信講座およびスクーリングから成り立っている。
スクーリングの最終日に登録講習修了試験が実施される。この終了試験に合格すると「登録講習修了者証明書」が交付される。この証明書によって宅地建物取引士資格試験の一部免除の適用を受けることができる。
不動産流通推進センター
不動産業の近代化を推進するための組織で、1980(昭和55)年に設立された公益財団法人。
その主要な業務は、
1.不動産流通市場の整備・近代化に対する支援(レインズの開発、価格査定マニュアル等の策定・普及、調査研究など)
2.協業化のための借入れに対する債務保証
3.不動産業に従事する人材の育成(宅建試験合格者のための登録実務講習、不動産コンサルティング技能試験・登録、初任従業者研修などの実施)
である。
また、不動産流通4団体((公社)全国宅地建物取引業協会連合会、(一社)不動産流通経営協会、(公社)全日本不動産協会、(一社)日本住宅建設産業協会が参加する不動産物件の検索サイト「不動産ジャパン」の運営も担当している。
宅地建物取引業
宅地建物取引業とは「宅地建物の取引」を「業として行なう」ことである(法第2条第2号)。
ここで「宅地建物の取引」と「業として行なう」とは具体的には次の意味である。
1.「宅地建物の取引」とは次の1)および2)を指している。
1)宅地建物の売買・交換
2)宅地建物の売買・交換・貸借の媒介・代理
上記1.の1)では「宅地建物の貸借」が除外されている。このため、自ら貸主として賃貸ビル・賃貸マンション・アパート・土地・駐車場を不特定多数の者に反復継続的に貸す行為は、宅地建物取引業から除外されているので、宅地建物取引業の免許を取得する必要がない。
またここでいう「宅地」とは、宅地建物取引業法上の宅地を指す(詳しくは「宅地(宅地建物取引業法における〜)」を参照のこと)。
2.「業として行なう」とは、宅地建物の取引を「社会通念上事業の遂行と見ることができる程度に行なう状態」を指す。具体的な判断基準は宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方の「第2条第2号関係」に記載されているが、主な考え方は次のとおりである。
1)取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行なおうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
2)取引の反復継続性
反復継続的に取引を行なおうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行なおうとするものは事業性が低い。
実務経験(宅地建物取引士の登録における〜)
宅地建物取引士として登録する際に必要とされる、宅地建物取引業に従事した経験をいう。
宅地建物取引士資格試験に合格した者が取引士として登録を申請しようとする場合には、原則として宅地建物の取引に関し2年以上の実務の経験を有することが必要とされている。この経験は、免許を受けた宅地建物取引業者としての経験、または宅地建物取引業者のもとで勤務していた経験でなければならず、また、経験として認められる実務は、顧客への説明、物件の調査等の具体的な取引に関する業務であるとされている。
なお、実務経験がない場合でも、国土交通大臣が実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者は、取引士として登録を申請できることとされている。例えば、宅地または建物の取引に関する実務についての講習であって国土交通大臣の登録を受けたもの(登録実務講習)を修了した者が、これに該当する。
建物
民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。
具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。
住宅金融公庫
特殊法人(政府の機能の一部を担う特別の法律による法人)の一つで、政府の保証を背景とした住宅金融業務を実施することを目的に1950(昭和25)年に設立された。その中心的な業務は、個人住宅向けの資金融資、賃貸住宅建設のための融資、住宅融資保険などであった。だが、民間金融機関の個人向け住宅ローンの拡大等を受けて、2003(平成15)年10月からは、従来の融資業務を縮小し、新たに始めた証券化支援業務を中心とした民間金融機関による住宅金融の支援・補完機能を担う組織へと転換した。
さらに2007(平成15)年には、住宅金融公庫は廃止され、その権利義務は、(独)住宅金融支援機構に引き継がれた。