最終更新日:2023/10/24
使用細則
しようさいそく分譲マンションのような区分所有建物において、管理規約に基づいて設定される共同生活上の詳細なルールのことを「使用細則」という。
この使用細則は、区分所有者の集会において管理規約とは別途に作成される規則であり、共同生活において遵守すべきルールを詳細に定めるものである。
その内容は分譲マンションごとにさまざまであるが、一般的にはおおむね次のような事項が「使用細則」に規定されている。
1.禁止される事項(物の放置・共用部分に係る工事など)
2.管理組合に届出を必要とする事項(入居者の変更・専有部分の賃貸など)
3.駐車場・駐輪場・専用庭の使用に関する事項
4.ゴミ処理
5.違反者に対する措置
なお、上記の事項の全部を一つの使用細則で定める必要はなく、目的ごとに複数の使用細則を作ることも可能である(例えば全般的なルールについては「使用細則」、駐車場については「駐車場使用細則」を設けるなど)。
また、使用細則で規定されている事項は、多くの場合、共同生活のルールに関する事柄であるので、原則的には、集会の普通決議によって変更することが可能である(すなわち集会の特別決議を経る必要がない)。
ただし使用細則の変更が、管理規約の内容の変更に該当する場合や、建物・敷地の管理・使用に関する基本的事項の変更に該当する場合には、管理規約そのものの変更の手続きを踏む必要がある。
従ってこうした場合には、集会の特別決議(区分所有者の4分の3以上の出席かつ議決権の4分の3以上の賛成)が必要となる。
このように使用細則中の変更しようとする部分の性質によって、変更手続きが大きく異なるので注意したい。
区分所有建物
区分所有建物となるためには次の2つの要件を満たすことが必要である。
1.建物の各部分に構造上の独立性があること
これは、建物の各部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていることを指している。ふすま、障子、間仕切りなどによる遮断では足りない。
2.建物の各部分に利用上の独立性があること
これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して、用途を果たすことを意味している。例えば居住用の建物であれば、独立した各部分がそれぞれ一つの住居として使用可能であるということである。
上記1.と2.を満たすような建物の各部分について、それぞれ別個の所有権が成立しているとき、その建物は「区分所有建物」と呼ばれる。区分所有建物については、民法の特別法である区分所有法が適用される。
代表的なものとしては分譲マンションが区分所有建物である。しかし分譲マンションに限らず、オフィスビル・商業店舗・倉庫等であっても、上記1.と2.を満たし、建物の独立した各部分について別個の所有権が成立しているならば区分所有建物となる。
なお区分所有建物では、建物の独立した各部分は「専有部分」と呼ばれる。
また、この専有部分を所有する者のことを「区分所有者」という。
廊下・エレベータ・階段などのように区分所有者が共同で利用する建物の部分は「共用部分」と呼ばれ、区分所有者が共有する。
また建物の敷地も、区分所有者の共有となる(ただし土地権利が借地権である場合には「準共有」となる)。このとき区分所有者が取得している敷地の共有持分は「敷地利用権」と呼ばれる。
従って区分所有建物においては、区分所有者は、専有部分の所有権、共用部分の共有持分、敷地の共有持分という3種類の権利を持っていることになる。
管理規約(区分所有法による〜)
2.共用部分の範囲
3.敷地・付属施設・共用部分に関する各区分所有者の持つ共有持分の割合
4.専用使用権の範囲
5.敷地利用権と専有部分の分離処分の可否
6.使用細則(使用に関する詳細な規則)の設定
7.集会、管理組合、理事会、会計等に関する事項 なお、管理規約は集会で設定されるべきものであるが、マンション分譲業者が最初にマンションの全部を所有している場合には、次の事項に限っては、公正証書で定めることによって、集会を経ずに管理規約を設定することができるとされている。
1.規約共用部分
2.規約敷地
3.専有部分と敷地利用権の分離処分の可否
4.敷地利用権の共有持分の割合
区分所有者
集会(区分所有法における〜)
区分所有建物では、区分所有者は管理組合の構成員となる。この区分所有者の全員が参加する意思決定機関が「集会」である。一般的には「管理組合総会」「管理組合集会」「総会」とも呼ばれるが、区分所有法では「集会」という名称を使用している。
区分所有法では、「管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない」と定めている(区分所有法第34条第1項・第2項)。ここでいう管理者とは通常は、管理組合の理事長のことである。また年に1回以上定期的に開催される集会は、一般的には「通常総会」と呼ばれている。
このほかに、特定の議案を審議するために区分所有者の一定数以上の請求により臨時的に集会を開催することも可能であり、こうした集会は「臨時総会」と呼ばれている(区分所有法第34条第3項から第5項)。
集会を開催する場合、管理者(理事長)は、開催日より1週間以上前に、開催日時・開催場所・議案の概要を各区分所有者に通知する必要がある(区分所有法第35条)。ただし区分所有者全員が同意した場合に限り、こうした招集手続きを省略することも可能である(区分所有法第36条)。
集会が開催されると、原則として管理者(理事長)が議長となり、あらかじめ通知された議案が審議される。議案を議決する方法としては、普通決議と特別決議がある。
区分所有者は集会に自ら出席して、議案を審議するのが原則であるが、出席できない場合には、書面によって議決を行なうことができ、また代理人を選任して代理人を出席させることも可能である(区分所有法第39条第2項)。
書面による場合には、あらかじめ各議案についての賛成・反対の意見を表明した書面(議決権行使書という)を、管理者(理事長)に提出しておく。また代理人を選任する場合には、その代理人を選任したことを証明するための書面(委任状)を管理者(理事長)に提出する。
集会の議事の内容については、議長が議事録を作成しなければならない(区分所有法第42条)。この議事録は管理者(理事長)が保管し、関係者の請求があったとき、管理者はいつでもこの議事録を閲覧させる必要がある(区分所有法第42条・第33条)。
このように集会は、区分所有者の最高の意思決定機関であるが、日常的な管理組合の運営については集会の下部機関として管理規約にもとづき「理事会」が組織されており、さまざまな業務を執行している。
共用部分
具体的には、次の3つのものが「共用部分」である(区分所有法第2条)。
1.その性質上区分所有者が共同で使用する部分(廊下、階段、エレベーター、エントランス、バルコニー、外壁など)
2.専有部分に属さない建物の付属物(専有部分の外部にある電気・ガス・水道設備など)
3.本来は専有部分となることができるが、管理規約の定めにより共用部分とされたもの(管理人室・集会室など)
このような1.〜3.の共用部分は、原則として区分所有者全員の共有である(区分所有法第11条)。
また共用部分は共有であるため、各区分所有者はそれぞれ共用部分に関する共有持分を持っていることになる。
この共有持分の割合は、原則として、専有部分の床面積(専有面積)の割合に等しい(区分所有法第14条)が、この割合は規約により変えることができる。
また区分所有者は、その共用部分の共有持分のみを自由に売却等することはできない(区分所有法第15条)。
管理組合
区分所有建物においては、区分所有者は区分所有法により、当然にこの「管理組合」に加入することとされているので、区分所有者の任意で管理組合から脱退することはできない(区分所有法第3条)。
このような管理組合は、集会(いわゆる管理組合の総会)を開き、管理に関するさまざまな事項を議決し、管理規約を定める。
また管理組合の通常業務を執行するために、管理規約にもとづいて複数の理事が選出され、この理事によって構成される理事会が業務を行なう。
また管理組合は、法人になることができる。法人になった管理組合は「管理組合法人」と呼ばれる。
専有部分
分譲マンションの場合でいえば、各住戸の内部が「専有部分」に該当する。
この反対に、区分所有建物において区分所有者が全員で共有している部分(例えば廊下・階段・バルコニーなど)は「共用部分」と呼ばれる。
駐輪場
専用庭
普通決議
区分所有法では、「集会での議案の議決は、原則として区分所有者数の過半数および議決権の過半数の賛成で可決する」という旨を定めている(区分所有法第39条第1項)。
従って、通常の議案については、区分所有者数の過半数と議決権の過半数の賛成があれば可決できることになり、こうした決議方法を「普通決議」と呼んでいる。
ただし実際には、管理組合の集会において、区分所有者の出席が少なく(かつ書面による権利行使や代理人の選任も行なわれず)、上記のような過半数の決議要件を満たすことが困難なケースもある。こうした場合に備えて、管理組合が管理規約において、普通決議の要件を「過半数」よりもあらかじめ緩和しておくことも可能とされている(区分所有法第39条第1項)。
特別決議
この特別決議を必要とする議案は、区分所有法により次の8種類が規定されている。 1.管理規約の設定・変更・廃止(同法第31条)
2.管理組合法人の成立(同法第47条)
3.共用部分等の変更(同法第17条・第21条)
4.大規模滅失における建物の復旧(同法第61条第5項)
5.建物の建替え(同法第62条)
6.専有部分の使用禁止の請求(同法第58条)
7.区分所有権の競売の請求(同法第59条)
8.占有者に対する引渡し請求(同法第60条)
上記の8種類のうち、「建物の建替え」を除く7種類については、特別決議を行なうための議決要件は、「区分所有者数の4分の3以上」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成である。
ただし「共用部分等の変更」についてはこの議決要件を管理規約により「区分所有者数の過半数」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成にまで緩和することができる。
また「建物の建替え」についての決議要件は「区分所有者数の5分の4以上」かつ「議決権の5分の4以上」の賛成である。
建物
敷地
例えば、ある人の所有地の上に「住宅」と「物置」が別々に建っている場合は、この2つは用途上不可分であるので、別々の敷地上に建てたと主張することはできない、ということである。 ところで、建築基準法では「敷地」が衛生的で安全であるように、次のようなルールを設定しているので注意したい(建築基準法19条)。 1.敷地は、道より高くなければならない(ただし排水や防湿の措置を取れば可)
2.敷地が、湿潤な土地や出水の多い土地であるときは、盛り土や地盤の改良を行なう。
3.敷地には、雨水と汚水を外部に排出する仕組み(下水道など)をしなければならない。
4.崖崩れの被害にあう恐れがあるときは、擁壁(ようへき)の設置などをしなければならない。
議決権(区分所有法における〜)
ここでいう「議決権」とは、原則として各区分所有者の専有部分の割合を指している(区分所有法第38条)。
例えば、ある区分所有建物の専有部分の面積の合計が1,000平方メートルの場合に、ある区分所有者の専有部分の面積が70平方メートルであるならば、その区分所有者の議決権は「1,000分の70」となるのが原則である(区分所有法第38条・第14条第1項)。
ただし管理規約の定めによって、これとは異なる割合で、議決権を定めることも可能である(区分所有法第38条)。
分譲マンションなどの区分所有建物では、管理組合は、区分所有者どうしの関係を定めるルールである管理規約を設定する。
この管理規約を設定するためには、集会における特別決議(すなわち区分所有者数の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上の賛成)で可決する必要がある。
このようにして特別多数により決議されて設定された管理規約であっても、時代の変化や入居者の状況の変化に応じて、内容を変更する必要に迫られる場合がある。特に最近ではペット飼育が一般化しつつあるため、管理規約の変更が議論されることが多くなっている。
このような管理規約の変更について、区分所有法では次の2つの要件を定めている。
1.管理規約を変更するには、区分所有者数および議決権の各4分の3以上の多数によって集会で決議する必要がある(区分所有法第31条)。
2.管理規約を変更しようとする場合に、その管理規約の変更が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」は、その一部の区分所有者の承諾を得なければ、管理規約を変更することができない(区分所有法第31条)。
まず上記1.のように、管理規約の変更には4分の3以上の特別多数の賛成が必要である。
また、たとえ4分の3以上の賛成を得ることができたとしても、その管理規約の変更により、一部の区分所有者だけが不利益を受ける可能性があるときは、上記2.によりその不利益を受けるであろう区分所有者の承諾を得なければ、管理規約を変更することはできない。
このように厳しい要件が定められているので、管理規約の変更には困難が伴うことが多い。
なお使用細則の変更については、原則として過半数の賛成で行なうことができるが、建物および敷地の管理に関する基本的な事項に関わる部分の変更には、4分の3以上の賛成が必要と考えられている(詳しくは使用細則へ)。