代理行為に関して意思の欠缺、瑕疵のある意思表示などの欠陥が存在することをいう。
瑕疵とは「きず」という意味である。
例えば、代理人が冗談で取引をすると意思表示をした場合には、この代理人の意思表示には、意思の欠缺(この場合には心裡留保)という欠陥が存在することとなり、代理行為に瑕疵があるということができる。
民法では、このような代理行為の瑕疵は、「代理人について判断する」と規定している(民法第101条第1項)。判例・通説では「代理における行為の主体は、代理人である」と考えられている(これを代理人行為説という)。この代理人行為説の立場からすれば、この民法第101条第1項は当然の規定であるということができる。
例えば、本人(A)が代理人(B )に土地の売却の代理権を与えたが、取引の相手方(C)が代理人に対して詐欺を働き、代理人を騙して土地を購入したとする。このとき、代理人について詐欺が成立しているので、Aは、101条第1項によりAC間の土地売買契約を詐欺による意思表示を理由として取消すことができる。
ただし、代理人Bが相手方Cに対して詐欺を働いた場合は問題である。民法第101条第1項ではこのような事態を予定していないからである。通説は、本人AがBの詐欺行為を知らない場合であっても、CはBの詐欺を理由として売買契約を取り消すことができるとする。
また、本人Aが相手方C対して詐欺を働いた場合はどうか。この場合には、一見、Aという第三者がBC間の取引においてCに詐欺を働いたという「第三者詐欺」に該当するようにも見える。仮に第三者詐欺に該当するのならば、Bが善意(=BがAの詐欺を知らない、又は知ることができない状態)である場合には、Cは取消しを主張することができなくなってしまう。
しかしこの場合には、AとBが代理関係にある以上、Aは第三者ではなく当事者であると考えるべきである。従って通説ではこの場合には、たとえBが善意(=BがAの詐欺行為を知らない、又は知ることができない状態)であったとしても、CはAに対して取消しを主張できると考えている。