無権代理による取引は、本人に対する関係では本来無効であるが、本人がこの取引を追認した場合には、その取引ははじめから有効であったものとなる(民法第116条)。
このため、取引の相手方は、本人が追認するか否かが判明するまでの期間は、取引が確定的に無効であるか否かが定まらないという不安定な状態に置かれる。
そこで民法では、取引の相手方は、無権代理による取引を取り消すことができるという規定を設けている(民法第115条)。取引の相手方がこの取消権を行使すれば、本人はもはや追認することができなくなり、無権代理による取引は無効なものとして確定する。
なお、この取消権を行使できるのは、善意の(=無権代理であることを知らなかった)相手方に限られる。また取消権を行使した場合には、相手方は、無権代理人の責任を追及する(民法第117条)こともできなくなる。