宅地建物取引業を営もうとする者(個人または法人)が、宅地建物取引業の免許を申請した場合には、一定の事由に該当する場合には、免許を与えることができない(宅地建物取引業法)。
このような免許の欠格事由の一つとして、免許を取得しようとする個人が、過去に一定の刑事罰を受けた経歴がある場合には、原則として刑の執行を終えてから5年間は、免許を受けることができないとされている。
(1)禁固以上の刑を受けた場合
刑罰には重い順に「死刑、懲役、禁固、罰金、拘留、科料」があるとされている。なお、行政法規違反に対する「過料」は刑罰ではない。
宅地建物取引業法では「禁固以上の刑を受けた場合には、刑の執行が終わった日(または刑の執行を受けることがなくなった日)から5年間は、免許を受けることができない」旨を定めている。従って「死刑、懲役、禁固」の刑を受ければ、その罪名に関係なく、原則として刑の執行が終わった日から5年間は免許の欠格事由に該当することとなる。
(2)一定の犯罪について罰金刑を受けた場合
一定の犯罪については、罰金刑であっても、刑の執行を終わった日(または刑の執行を受けることがなくなった日)から5年間は、免許を受けることができない。その犯罪は、次の4種類である。
1)「宅地建物取引業」への違反に対する罰金の刑
2)「傷害罪・暴行罪・脅迫罪・背任罪・傷害助勢罪・凶器準備集合罪」に対する罰金の刑
3)「暴力行為等処罰に関する法律」への違反に対する罰金の刑
4)「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」への違反に対する罰金の刑
これらの場合、「刑の執行が終わった日」とは、懲役と禁固の場合は監獄から出獄した日、罰金の場合は罰金を納付した日である。この日から5年間は宅地建物取引業の免許を受けることはできない。
「刑の執行を受けることがなくなった日から5年間」とは、「仮出獄における残刑期満了の日から5年間」という意味である。仮出獄(いわゆる仮出所)は、有期刑では刑期の3分の1(無期刑では10年)を経過したときに地方更正保護委員会の処分により仮に出獄することで、仮出獄の場合には、仮出獄を取り消されることなく残りの刑期を経過すれば、刑の執行が終了したものとなる。従って仮出獄の場合は、「刑の執行を受けることがなくなった日から5年間」とは「残刑期がすべて終了した日から5年間」という意味である。
なお、執行猶予(情状等を考慮して刑の執行を一定期間猶予すること)の場合には、執行猶予期間が終了したときは刑の言い渡しそのものが失効する。従って執行猶予期間が経過すれば、その翌日から宅地建物取引業の免許を受けることができる。また、大赦・特赦の場合には、刑の言い渡しそのものが失効するので、執行猶予の場合と同じように取り扱われる。
さらに、公訴時効(犯罪行為が終わったときから一定期間が経過することにより刑事訴訟を提起することができなくなること)の場合は、時効が完成した日が「刑の執行を受けることがなくなった日」に該当すると解釈されている。従って、時効完成の日から5年間は免許を受けることができない。