契約の締結によって一定の行為を履行する責任が生じるという私法上の原理。債務不履行によって損害賠償責任が生じるのはこの原理に基づく。
伝統的に、契約責任原理によって損害賠償責任が生じるのは、「債務者の責めに帰すべき事由(帰責事由)」によって債務が履行されない場合であり、債務者の故意・過失又は信義則上これと同等の事由がない場合には、損害賠償責任は生じないと考えられている。これに対して、消費者契約法理の進展などを背景にして、契約によって引き受けた結果を実現できなかったことによって生じた損害(ただし契約が想定していない障害による損害を除く)に対しては賠償の責任があるとし、債務不履行に対して責任を負わないのは「契約において債務者が引き受けていなかった事由」がある場合であるという考え方が提起されている。
このような考え方の違いは、契約責任原理を適用する場合に責任を負う根拠をどこに求めるかの違いの現れでもあり、前者は故意・過失の存在に、後者は契約の拘束に反する行動に、それぞれ責任を負わせることとなる。最近は、契約に基づく規律を重視する立場が強くなっていて、どちらの考え方を適用すべきかなどについて議論がある。
なお、契約責任原理の適用に当たっては、不動産の売買のような特定物の取引において、売主が引き受ける責任の範囲や内容を明確に確定できるかどうかなど実務的な視点からの議論も必要である。