免許証番号などを記載した「標識」を、宅地建物取引業者の事務所その他の一定の場所に掲示することを「標識の掲示」という。
1.趣旨
無免許営業を防止すること、責任の所在を明確にすること等の目的で、宅地建物取引業者に義務付けられたものである(宅建業法第50条第1項)。
2.標識に記載すべき事項
標識に掲示すべき事項は、免許証番号、免許有効期間、商号、代表者氏名、主たる事務所の所在地など(施行規則第19条第2項)。
3.標識を掲示すべき場所
標識を掲示すべき場所としては、次の1)から3)の3種類の場所が法定されている。
1)事務所(法第3条第1項)
2)事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所(施行規則第15条の5の2)
3)1)および2)以外の場所であって標識を掲示すべき場所(法第50条第1項、施行規則第19条第1項)
4.標識を掲示すべき場所についての説明
上記の1)と2)については、別項目の「事務所」「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」に詳しい説明があるのでそちらを参照のこと。
上記の3)の場所は、施行規則第19条第1項において法定されている。具体的には上記の3)の場所とは、次のa)からe)の場所のことである。
a)継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
b)宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地または建物の所在する場所(ここで「一団」とは「10戸以上または10区画以上」を指す。次のc)とd)でも同じ(施行規則第15条の5の2による))
c)一団の宅地建物の分譲を案内所を設置して行なう場合には、その案内所
d)他の宅地建物取引業者が行なう一団の宅地建物の分譲の代理または媒介を案内所を設置して行なう場合には、その案内所
e)宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合には、これらの催しを実施する場所
5.標識を掲示すべき場所についての説明の補足
上述の3.の2)の場所と3)の場所は、要件が非常によく似ているので区別がつきにくい。
区別するための判断基準は、2)の場所では、契約の締結または契約の申込みを受けるという業務を行なうことが要件になっているのに対して、3)の場所ではそうした契約に関する要件がないという点である。
例えば、ある10区画の宅地の分譲の案内所について、その案内所で契約の締結を行なうかまたは契約の申込みを受けるのであれば、その案内所は2)の場所となり、専任の宅地建物取引士を1名以上設置するとともに、標識を掲示しなければならない。
しかし、その案内所において、契約の締結を行なうことも契約の申込みを受けることもしないのであれば、その案内所は3)の場所となるので、専任の宅地建物取引士を設置する義務はないが、標識は必ず掲示しなければならない、ということである。
また上述の4.の場所のうちb)の場所(すなわち一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地または建物の所在する場所)については、専任の宅地建物取引士を設置する場所になることはあり得ないが、標識は必ず掲示しなければならないことに注意したい。
デジタルサイネージ等のICT機器を活用した掲示についても、公衆が必要なときに確認できるもの、標識を確認することができる旨の表示が常時分かりやすい形でなされていることなど、いくつかの要件を満たす場合には書面での標識の掲示と同等の役割を果たしているものと考えられる。