分譲マンションなどの区分所有建物において、区分所有者が土地に関する権利と建物に関する権利を切り離して売却すること等が禁止されていることを指す。
分譲マンションなどの区分所有建物では、区分所有者は次の3つの権利を持っている。
1.専有部分の所有権
2.共用部分の共有持分
3.土地の共有持分(これを敷地利用権という)
この3つの権利のうち、1.の専有部分の所有権と3.の敷地利用権を分離して処分することは、区分所有法により原則的に禁止されている(区分所有法第22条)。(なお1.と2.を分離することも区分所有法第15条により原則的に禁止されている)
ただし管理規約で区分所有法第22条とは異なる定めを置くこともできるが、通常は管理規約において「分離して処分してはならない」という定めを設けている。
この結果、例えばある区分所有者が、敷地利用権だけを第三者に売却しようとしても、区分所有法および管理規約の定めにより、売却することができないことになる。
またある区分所有者が、借入金の担保とするために、敷地利用権だけに抵当権を設定しようとしても、区分所有法および管理規約の定めにより、抵当権設定ができないことになる。
このような「敷地利用権と専有部分の一体化」は1983(昭和58)年の区分所有法の大改正により導入された制度である(施行は1984(昭和59)年1月1日)。
それ以前は、区分所有建物でも、建物の権利と土地の権利を別々に処分することが可能であっため、分譲マンションの土地登記簿には、各住戸の売買や担保設定のたびに所有権移転登記や抵当権設定登記が記入された。
そのため住戸数が多い場合には、マンションの土地登記簿の記載内容が膨大となり、登記事務の煩雑化を招き、記載ミスや読み間違いが起きるという事態になっていた。
こうした問題に対処するため、「敷地利用権と専有部分の一体化」が導入された。これにより、敷地利用権が常に専有部分と一緒に売買等されることになったので、区分所有建物の建物登記簿のみに所有権移転登記等を記載し、土地登記簿にはこれらの登記を記載しない扱いとした(不動産登記法第46条「敷地権である旨の登記」)。
こうして土地登記簿への記載が全面的に省略された結果、登記事務の大幅な簡略化が実現したのである。